第42話 リリ、故郷に帰る。


ロゼリア王立学園の長期休暇が始まったんだ!もう、本当に楽しみで、胸がドキドキしてたよ。だって、久しぶりに故郷の森に帰れるんだもん!

ゴードンさん、村のみんな元気かな?


「ミーナちゃん、ユリウス王子!私、お家に帰るね!」


そう言うと、ミーナちゃんが目をキラキラさせて、勢いよく言ったんだ。


「リリ!私も、一緒に行く!」


「えっ!?ミーナちゃんも?」


思わず、大きな声が出ちゃった。ミーナちゃんは、にこにこしながら続ける。


「うん!だって、リリのお家、見てみたいんだもん!それに、あのリルちゃんもいるんでしょう?」

ミーナちゃんはすっかりモフモフ信者だ。


ミーナちゃんの熱い願いに、ユリウス王子が優しく微笑んで、私に言ってくれた。


「リリ、ミーナの願いを叶えてやってくれないか?彼女は、君の故郷に心惹かれているんだ」


そしたら、今度はフローラちゃんが、ちょっと控えめに手を挙げて。


「あの、リリ様わたくしも伺ってもよろしいでしょうか?」


「もちろん!大歓迎だよ!」


私が嬉しそうに頷くと、みんなが笑顔になった!


こうして、ユリウス王子、ミーナちゃん、フローラちゃん、ガブリエル、そして私の護衛騎士のシスティナとリリア、みんなで私の故郷へ帰ることになったんだ!なんだか、大所帯だね!


っていうか、王子様は忙しくはないのかな?

「視察だ」

そういう事らしい。

「あら?わたくしに全てを押し付けて、どちらに?」

エレノアさんが笑顔で、ユリウス王子の背後に立っています。

笑顔なのに、なんだか怖いです。

「さ、殿下。お仕事が待っていますよ。ほら、ガブリエル様も騎士団の予算の件でお話がありましてよ」


えっと、頑張ってください、ユリウス王子。



「リリ様、荷物は全て、私どもが手配いたしました」


セバスチャンが、いつものように恭しく頭を下げてくれた。


「みんな、ありがとう!なんだか、遠足みたいで、楽しいね!」


私はリルに乗って、みんなの先頭を歩いていく。風が気持ちいいな!


一行が王都の門を出ようとした、その時だったんだ。


「待て!ワシも行くぞ!」


突然、後ろから大声がして、みんなが振り返った。なんと、声の主はロゼリア国王陛下!執務服のままで、すごい勢いで走って来たから、みんなびっくり!


「お父様!?」



ユリウス王子とミーナちゃんが、同時に驚きの声を上げた。国王陛下は、額の汗を拭いながら、早口で言うんだ。


「視察だ、視察。」


国王陛下は、そう言って私の隣に駆け寄ろうとした...その瞬間だった。


「あなた!どこへ行くつもりですか!」


国王陛下の背後から、とっても美しい王妃様が、怒った顔で現れたんだ!

いや、顔はニコニコしているんだよ。でも、雰囲気が・・・めっちゃ怖いです。

「ひっ!王妃……!」


国王陛下は、まるで凍り付いたみたいに、怯えた声を上げた。


「わたくしは、あなたに、山積みの書類を今日中に片付けるように、と申し上げましたわね?それを置いて、どこかへ行こうなど、国王として、どうなのでしょうか?」


あ、これは『あかんやつ』ってやつですね。わかります。


王妃様は、そう言うと、国王陛下の耳を掴んで、引きずっていきました。


「い、いや、王妃よ!これは、その……リリ殿の故郷に、視察に行くのだ!」


「視察など、後回しです!さあ、お城へ戻りますわよ!あ、ミーナ休暇を楽しんでsね」


王妃様は、そのまま国王陛下の耳を引っ張りながら、王宮へと連れ戻していくのでした。


「お前たち、リリを頼んだぞ!絶対に、無事で帰ってくるのだぞ!」


国王陛下は、引きずられながらも、私たちにそう言い残した。


「はい、父上!」


ミーナちゃんは、苦笑いしながら国王陛下を見送った。


「なんだか、おもしろいね、ミーナちゃんのお家は!」


私は、思わず笑っちゃった。フローラちゃんも、クスッと微笑んでたよ。


さあ、これで本当に出発だ!故郷の森、みんなと一緒に行くなんて、最高に楽しみだね!

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