第一章 Back to 207χ

1. the Master Chef's Cake

西暦207χ年、アンドー・メカトロニクス社(ando mechatronics corp.)技術開発部。


1週間後に迫る稼働試験を前に、m.iシリーズ開発チームは多忙を極める。


「試験期間用の糧食納品終わりました!」

「じゃあ、検品済ませてコンテナに運び込んでおいて。常温・冷蔵・冷凍間違えないでね」


「アトモスフィアの御糸みいとさん、打ち合わせにお見えになりました!」

「あ、圭ね。room Cで待っててもらって。・・・思ったより早かったわね…」



「姉さん、アズ(AZ-1)の起動終ったけど、圭さんにも見てもらう?」

「そうね、気象観測データのリンク設定、今日中に片付けちゃいましょ。」


テキパキ捌いているのは、チームリーダーで、稀代の天才科学者「杏西あんざい 杏あん」


アンドロイドと動力炉「eTRANSeエトランゼ」をマッチングしながら、開発チームのメンバーを指示する姿は、まさに「頼れる姉御」と言ったところ。


気さくでさっぱりとした人柄もあって、あんずジャムのイメージから親しみを込めて「ジャム姉さん」「レディ・ジャム」なんて呼ばれてる。


当人も結構気に入っているようだ。


かく言う俺も開発チームの一員で、杏西 杏 不祥の弟「杏西あんざい 凛悟りんご


姉の出来が良すぎて「不祥の弟」が若干ネタっぽくなってしまう…


姉さんも、メカニックとしての腕前は評価してくれてるんで、「自慢の弟」でありたいとは、思ってるけどね。



「リンゴサン 気象データ機器接続インターフェース 一覧表 用意シマスカ」

「あぁ、アズ(AZ-1)頼むよ。」

「カシコマリマシタ タブレット ニ ドキュメント 用意シマス」

「一足先に、room Cに移動するか…」

「カシコマリマシタ」


アズ(AZ-1)の反応、ちょっと素っ気ないな…語彙、増やすかな…



アズ(AZ-1)は、稼働試験を控えた「m.iシリーズ」の1体、後方支援・情報処理用小型アンドロイド


「m.i series Type AZ-1」通称「アズ」


型式名称にこだわる姉さんが「analyzeアナライズ」も掛けた「Type AZ」の1号機。


測定・観測データ処理にリソースを割いてる分、会話がシンプルになるけど、もうちょっとキャラクターつけてあげても良いかな。


姉さんにも聞いてみるか…


会議室 room C 到着--

あれ?誰か話し込んでる…圭さん!?…皆実みなみ専務!?


「御糸さん、大変お待たせしました。ご足労頂き恐縮です。ところで専務…ご用件でも?」


「おぉ、凛悟君。久しぶりに御糸君と顔を合わせられると思ってね…」


「ホント、学園長先生もお変わりなく…なんだか若返ってませんか?」


--そうだった。皆実専務は、圭さんと姉さんの出身大学の学園長でもある。


「凛悟君、申し訳ないが、会議室を入れ替えてはもらえないか?」


「専務、役員用会議室に不具合でも?」


「いや、機材更新が間に合ってなくてね。プレゼン担当者の機材が、room Cでしか使えないようなんだ。」


「承知しました。別の会議室を探します。」


「それには及ばないよ。役員用会議室を使ってくれたまえ。御糸君用のIDも渡してある。凛悟君、杏君のIDも登録しておいたから、入室できるはずだよ。」


「ありがとうございます。恐縮です。」


-そのとき、ドアが開く。


「専務、役員用会議室ってことは…料理長のケーキ、ケータリングしてもよろしいですか?」


「姉さん!いつの間にっ!」


「杏君か。せっかくだし、御糸君を我が社の料理長特製ケーキでおもてなししてくれたまえ。」


「かしこまりました!料理長のケーキ、しっかり堪能…じゃなくて、お客様にご賞味頂きます!圭、凛悟、いざ役員会議室へ!」


「姉さん…今日はビジネス…専務、申し訳ありません。姉にはしっかり言い聞かせておきます…」


「いやいや、構わんよ。二人は私の教え子でもあるし、パートナーシップが原動力なのは理解しているからね。」


「ご馳走様です!!(×2)」


--姉さん…圭さん…貴女方は…

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M.I.(エムアイ) シュウ・タイラー @shue_tyler

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