第3話火葬場のセルフサービス



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### 第3話 火葬場のセルフサービス


「……んあ……」


意識が戻ると、まず感じたのは強烈な圧迫感だった。

狭い。なんだここ。身体の上下左右、すべてが硬い壁にぴったりとくっついて、身動き一つとれない。それに、ひどく息苦しい。


「んだよ、昨日の酒が残ってんのか……? まったく……」


かすれた声で悪態をつく。コンクリートの打ちっぱなしの壁に囲まれた、オシャレなカプセルホテルにでも泊まったんだっけか。それにしちゃあ、妙に熱い。サウナで寝ちまったか?


「おい、開かねーぞ!」


壁を叩くが、ゴツンと鈍い音が響くだけでびくともしない。冗談じゃねえ。閉じ込められてんのか?

焦りがじわじわとこみ上げてきた、その時だった。

視界の隅が、チロリとオレンジ色に揺らめいた。ゴウ、ゴウ、と地鳴りのような音が耳の奥で響き始める。


なんだ?


次の瞬間、足元から炎が上がった。俺が着ていた安物のスーツのズボンに、あっという間に火が燃え移る。


「うわああああああああっ!!」


狭い空間に、俺の絶叫がこだました。熱い! 燃えてる! なんで!

パニックで壁をめちゃくちゃに殴りつける。助けてくれ! 誰か!


だが、数秒後。

俺は殴る手をぴたりと止めた。


あれ?

炎は勢いを増し、今や俺の全身を舐めるように包み込んでいる。オレンジ色の光の中で、自分の身体が黒く焦げていくのが見える。

なのに。


「……熱くねーや。笑」


声に出して、自分で驚いた。

そうだ。燃えているはずなのに、熱くない。火傷のヒリつくような痛みも、肉が焼ける苦痛も、何一つ感じない。ただ、目の前で自分の身体が燃えていく光景が、まるで映画のように広がっているだけだ。


そこで、ふと思い出した。

昨日、横断歩道を渡ろうとして……やけに眩しいライトと、けたたましいクラクションの音……。


ああ、そっか。


俺は燃え盛る炎の中で、妙にスッキリした頭で納得した。


「そうだ。オレ、死んだんだっけ。笑」

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