第二話
昨日、貴子が言った明日、十一月十九日が始まる。オレは学校に行く前に日記帳を確認する。中はやっぱり白紙のままだ。
そうだよな。
そんなもんがあったら誰も苦労しねえ。
オレは日記帳を机の引出しの中にしまって部屋を出た。
教室に行くと貴子がオレの席に座ってる。
「おっはよ。辰之助、今日昼めし弁当作ってきたからね」
「そうかい。じゃあ、購買でパンでも買わねえといかねえな」
オレの言葉にむくれる貴子。
「定食屋の娘だぞ。美味いに決まってるだろ!」
「定食屋で料理作ってんのマスターだろ。まあ、大丈夫だよ。不味くても美味しいって言うのが男の仕事だからな。今日は体調がいいから大丈夫!」
「そう言う人にはあげ⋯⋯。なんでもない。昼休みはポプラ並木だよ」
はあ、大丈夫かな。
どうやら昨日の日記帳への書き込みは弁当みたいだな。
昼休みになった。貴子は先にポプラ並木に行ったようだ。実はオレと貴子は隣のクラス。つまり、貴子は同じクラスになったこともない男に後夜祭で告白するという博打をうったのだ。ある意味すごい。
オレは急いでポプラ並木へと歩いていく。
「おーい、こっち。こっち」
貴子がお弁当を広げてこっちに手を振っている。
「わりぃ、ちょっと授業が延長だったから」
「社会の矢島でしょ。アイツいつも延長するよね」
コイツ、なんでこんなに機嫌がいいんだ?
オレは貴子の隣に座ってお弁当を物色する。
「へえぇ、お前、料理得意なんだ」
「そうだよ。今ならお買い得だと思うけど、どう?」
貴子の言葉にオレは苦笑いをする。
「昨日日記帳に何書いたかわかったよ」
「マジ?」
「どうせオレと結婚するとかだろ。だいたい、お前、相手がオレでいいのか?」
オレの言葉に貴子は耳まで真っ赤にして俯く。
「じゃ、野村貴子さん、オレと結婚してくれ」
オレはこの日、貴子にプロポーズした。
十一月十九日はオレにとっては忘れられない日、そして貴子にとっては、おそらく十字架を背負った日となった。
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