第8話 狂気
怒涛のバースデーが終わり、
1月の閑散期がやってきた。
私は疲れ果てていた。
閑散期により客足は減り、毎日稼ぐのが至難の業となっている。
なによりも寒かった。
大阪の冬はなかなかに寒い。
素足で歩き回るには気温が足りなかった。
しかし、露出が命のこの商売。
気合いを入れるしかなかった。
売り上げを出さなければ殴られる。
ある日、立ちんぼをしていると、
若めの金髪の男に声を掛けられた。
「稼げる仕事あるよ。」
そう言われ詳しく聞くと
違法エンデリだった。
身分証の証明がいらず、書類にサインするだけだという。
私は寒い中立たなくて済むや警察に怯えなくてもいいと言われ、釣られてしまった。
寒い中、自分で客を探さなくてともいいのはかなりの利点であるし
警察にも見つかりにくい。
翌日から、その男、ゆうやと行動を共にする。
20時から合流し、4時まで働く。というものだ。
20時からにしたのは18時からの一件が入りやすいためだ。
ゆうやが初めて付けた客は黒人だった。
3Pで120分で入ったがプレイの仕方がすごく痛く、とてもじゃないが120分など耐えられない。それでも、お金のために120分やりきった。
しかし私に入ってくるバックはたった2万円だった。
その日は4万の稼ぎで受終したが、
たかくんには殴られてしまった。
ゆうやはその後、気前のいい日本人やスペイン人、在日アメリカ軍のアメリカ人を付けた。
しかし驚くほど稼げないのだ。
自分で稼いだ時の方が稼げていた。
会うたびに傷が増える私を心配し、
ゆうやが声をかけてくれる。
そこで稼げなければ彼氏に殴られるのだと
ゆうやに教えた。
すると、驚愕の表情を見せ、さらに客をとるのを頑張ってくれた。
かと言って客がいないわけではなかった。
なんせ、リピート率は100%。
必ず2回目も来るのだ。
しかし、思うように稼げず、身体的精神的にきつくなっていた頃に、ゆうやが
「今日やまとさんが来るから」
と、言っていた。どういう人なのかと聞くと
「気さくで優しい人だよ。あ、でも、これは内緒ね?大阪と奈良のヤクザの仲介役をしてるんだ。」
と、言っていた。
やはりか。と思った。
必ずしも違法なことにはヤクザが付きまとう。
いつも通り待機車に乗り込むと、
「ゆきちゃん?可愛いなあ!!
やまとです!よろしく!」
と、意気揚々と話す男がいた。
驚いて硬直するも、よろしくお願いします、と仕事モードで片付けた。
今日も全然仕事がなく、待機車でゴロゴロとしながら今日も殴られるのだろうと
心の準備をしていた。
稼ぎは3万円。
もう限界だった。
バーで散々罵られ、先に帰路に着くと
ゆうやから電話があった。
ゆうやは話しやすく、地元の友達感があり
つい話し込んでしまい、彼氏からの着信に気づかなかった。
家のドアを開ける音がして慌てて電話を切る。部屋の電気が付いていきなり、
「おい、お前なに無視してんねん、あ?
誰と電話しとった?お前裏切らんゆーてなかったか?」
と、ドスの効いたガチガチの関西弁で責められては萎縮してしまう。
私はお腹と頭を殴られながらも
「…っ違う、ただ世間話をしてて、気づかなかっただけだから…ごめんなさい…っ」
すると、電話してしたやつを教えろと言われ、全てを話してしまった。
「ごめんなさい、稼ごうと思ったの。
勝手なことしてごめんなさい」
と、必死に謝ると
「俺の言うことだけ聞いてればええんやで。他の男に洗脳されんな。俺だけを信じろ。」
そう言われ頭を撫でられるも、手振りが大きかったためビクッとなってしまった。
「そんなビビんなや笑ごめんなあ笑」
そう言って優しく撫でてくれた。
私はまたさらにたかくんに依存していったのである。
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