再販は絶対にしないと言っていたように全く再販の話は出なかった。

それに憤る者も少なくない。

元々1923本しか販売されず、捨てた人も多そうだし、現在残っているのは、数百本程度と推測されている。

欲しい人が強硬手段に出るのも考えられる事態であったと思う。

社長さんが強盗に刺されて死亡したというニュースが流れた。

ニュースでも小さく流れた程度だった。

SNSでは「ざまぁ」の声も少なくない。

私はあの人がすごく怖いし、あの時以来連絡もしてない。

でも、素直に冥福を祈った。

社長さんが亡くなったニュースが流れた日の夜、SNSに一つの投稿が流れてきた。

久しぶりにきらきらプリンスとフレデリカ様のハッシュタグを見た。

一つの動画が貼られており、あのゲームを持っている人は至急プレイして欲しいとのことだ。

動画を見てみた。

血の気が引くどころじゃない動画だった。

いつもならイベントを起こさないと、遠くから見ているだけのフレデリカが、プレイヤーのもとへと歩いてきた。

名前のようにヴァーミリオンのごとき、怒りと憎悪で朱色に燃えたぎった目でプレイヤーを睨みつけた。

プレイヤーに微妙に目が合っていないような……いや、これはプレイヤーを見ているんじゃない。

プレイヤーを通してこっちの世界を見ているんだ‼︎

気がついた瞬間、背筋が凍った。

「お前ら全員呪ってやる」

地の底から響いてくるような低い声で、吐き捨てると消え去った。

マジで何これ⁉︎立ち去ったんじゃなくて、消えたんだけど⁉︎

その後、エンディングには人形のようなフレデリカが現れて、次の周回が始まった。

GYXさんが魂がこもっていると言っていたキャラが消えた。

多分……私たちに向けて呪いの言葉を残して。

いないはずがない、いつものようにプレイヤーの私に憎悪を向けてくれと祈りながら、久しぶりにゲームを起動してみた。

え、フレデリカがいないんだけど⁉︎

いないんじゃなくて、ただ単に人形のように立っているだけのフレデリカがいるだけだ。

乙女ゲームコミュニティでプレイしている人の書き込みを見ても、同じ様にフレデリカがいなくなっているらしい。

オカルト板では大層な盛り上がりらしく、それだけでスレが消費されているという。

そんな最中、ローカルなニュースが一本流れてきた。

社長さんを殺した犯人が留置場で亡くなったらしい。

ここからはネット上の噂話、それも警察関係者の奥さんの友人とかいう、信憑性のかけらもない噂話だ。

どうやら監視カメラに人影のような黒いモヤが写ったら、次の瞬間には叫び声と人間技とは思えないほどに切り刻まれた遺体が残っていたという。

遺体を引き取りにきた身内がその場で卒倒するほどの酷さだったらしい。

これも面白がってネタとして拡散され、警察に凸する奴も出てきた。でも死因については一切語られないのが、その噂のネタ感を高めていった。