バ美肉おばさんは話を聞く⑭

波乱だらけの配信が終わった。

SNSには神動画や閲覧注意のハッシュタグがついた切り抜き動画が溢れた。

普段、5万再生くらいなのに100万再生を超えた。

あの黒歴史ゲームが、きらきらプリンスの系譜としては黒歴史ではあるんだけど、ゲームとしてはたった一回の動画配信で神ゲーへと評価が変わった。 

フリマアプリやオークションサイトでは300円でも売れ残っていたのが、あっという間に万単位の値段に釣り上がりそれでもなお売り切れるようになった。

近所の中古ゲームを扱っている店の100円ワゴンに置いてあったはずなのに、いつのまにかプレミアゲームとして鍵付きの棚に移されて、これまた数万円の値札がついていた。

「捨てちゃったよ」とか「割って粉々にしちゃった」と後悔の声がSNSには溢れた。 


考察系大手配信者はどのように世界が変化していくかを、検証していた。

いきなり鼻の穴が一つになるのではなく少しずつ鼻の穴が融合してきたりと些細な変化が起きていることがわかった。

フレデリカは本当に主人公の目を見つめながら殺すんだけど、そのバリエーションも並外れて豊富で、100周やっても同じ殺し方がないほどの凝りようだ。

日常が少しずつ壊れていくってシチュが好きな層からのホラーゲームとしての評価も爆上がりだった。

本気で1000周プレイするらしい。


大手実況プレイ配信者と若手実力派で知られる俳優がこのゲームを攻略すると言う。

俳優は私との対談配信を観て、社長さんのあらゆる動作を研究したそうだ。目線から手を伸ばすタイミングから何から何まで完コピできるようになったそうだ。

「クリアできるかも」ってSNSでは話題になっていたけど、私はまったくそう思えなかった。

結果は見る前からわかっていたけど、10回やって10回とも失敗だった。

社長さんがいたら「だって、フレデリカ様を愛してませんよね」と冷たく言い放つだろう。


SNSでは意見は真っ二つになっていた。

「社長さん以外クリアできないようにしてあるクソゲーだ」とする意見と「クリアできない程度の演技しかできないんだ」とする意見だ。

当然だけど結論が出るはずもない。

ホラーゲームファンはともかく、原作のきらきらプリンスのファンや若手実力派俳優のファンはかなりのアンチになった。


この頃にはもう、あのゲームをプレイする人も少なくなっていた。

流行の移り変わりはとても早く、あの1000周やると言っていた実況者でも、投稿はまばらになっていた。

それでもプレミアムゲームであることは変わりなく、たまに手に入れた実況者のプレイ動画が上がっていた。

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