平凡JDは乙女ゲームをプレイする⑧

目を覚ますと真っ白い部屋にいた。

近くにはとても懐かしい人がいた。

私にとっては何年どころじゃない。体感では何十年ぶりに会うお母さんだ。

手があまり動かない。声もほとんど出なかったけど、お母さんは気づいてくれた。


「やっと、起きてくれたのね‼︎」


涙声のお母さんの声だ。

すぐに先生たちが来て色々な検査をされた。

結果としては脳には問題はなし。

ただベッドで寝続けていたので、多少、体が動かしにくくなっていたくらいだ。

少しリハビリをしてから退院することになった。


私はVRのヘッドセットをしたまま部屋で倒れていたところを、学校に来なくなったことを心配した友人たちに発見されたらしい。

その後も目を覚まさず、原因不明の昏睡状態のまま三ヶ月経ったそうだ。

きらきらプリンスはこの件で回収騒ぎにまでなっていた。

私のは真っ先にメーカーに回収され調査された。

結果としてはソフトにもハードにも異常はなかった。

でも原因不明の昏睡騒動になったため、最終的にきらきらプリンスは販売中止になった。


そんなことはどうでもいい。

私のフレデリカ様に会えなくなってしまった。それが一番の問題だ。

じゃあどうする?私の私による私のためのきらきらプリンスを作ればいい。


親に心配されるくらい勉強し、アルバイトでお金を貯めた。

そのせいで、それまで付き合いのあった友人たちとは疎遠になってしまった。

貯めたお金を投資に回し、資金ができたので起業。

合間にゲームのプログラミングとシナリオの書き方、仕様書の書き方も勉強した。

運良く事業は軌道に乗り、あの日から十年経った今、結構な資産ができた。


かねてから準備していた開発会社を立ち上げ、きらきらプリンスのIPを買い取った。

十年前の曰くつきタイトルだから安く買うことができた。

ソースや3Dモデルのデータが手に入った。舞台となる世界やキャラクターは当時のものを少しリファインする。


フレデリカ様、もう少しだけ待っていてください。必ず会いにいきますよ。

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