平凡JDは乙女ゲームをプレイする②

いつものタイトルコール、いつものようにプロローグをスキップしようとしたのに、なぜかスキップできなかった。スキップボタンが表示されていなかったからだ。

まぁいいか、たまにはプロローグを見るのもいいだろう。でも久々に見るプロローグに違和感を覚えた。

入学式で悪役令嬢という設定のフレデリカが背筋を伸ばし堂々としていた。

あんなんだったっけ?いつもなら端っこの方でうつむいているのに。まぁ、本編が始まればいつものように進むはずだ。


初日、入学式後に教室へ向かう途中で王子様に出会うイベントがある。

ベッタベタの廊下でぶつかってってやつだ。ベタすぎるのにそれがイケメンなら全然OKってなってしまう。人間なんて単純なもんだ。


このゲームは乙女ゲームだ。

想定しているメインのプレイヤーは女性になっている。

だから、女性キャラはいてもイベントくらいで、普段はほぼ見かけることはない。

徹底的にプレイヤーに甘い世界になっているんだ。

なのに真っ先にフレデリカと廊下で出会った。

氷のようになんて言葉も甘いくらいの冷たい目で私を睨んできた。


「何アレ、おかしくない?フレデリカってあんなんだっけ?」


口にした途端、これまた恐ろしく冷たい声で「何か仰いましたか?」と問い詰められた。

珍しいイベントが起きたもんだ。ネットでもこんな風にフレデリカが出てくるイベントがあるなんて見たことはない。

こんなキャラ変するようなアップデートなんてあったっけ?

女キャラを相手にしてもしょうがないので、首を振って走り去った。

王子様とのイベントを逃したらどうしてくれんのさ。


王子様はチュートリアルキャラみたいなもんだ。

攻略しない方が難しいとまで言われるチョロいキャラだ。

その婚約者がさっきのフレデリカだ。

フレデリカは私に意地悪なことをする乙女ゲームの悪役令嬢キャラだ。

教科書を燃やす、水をかける、階段から突き落とす、といったことをする。

正確にはしたことにされるキャラだ。

画面の向こうの主人公ならまだしも、これはフルダイブ型VRだ。

イベントが進むとフレデリカが実際にそういう意地悪をしたことになっている。

だって、VRとはいえ水をかけられたり階段から突き落とされるなんて冗談じゃない。

そういうことはされていないにも関わらず、された体で慰められたり甘やかされたりするんだ。

最後は断罪イベントで裁かれてしまう不幸なキャラでもあるんだけど、普段は名前だけで最後までほとんど出てこないから、イベントの添え物くらいにしか思っていないプレイヤーが大半だろう。


そのフレデリカに真っ先に出会った。

そしてまだ何もしていないのにやたらと敵意を向けてきた。

本当に変なイベントが起きたもんだ。これはSNSにあげればバズるかなぁ。


王子様とも無事にイベントが起きたし、コマンド画面を出して今日は帰るコマンドをタップした。


効果音が鳴り響き、私は校門に立っていた。

最初の数日は攻略対象との出会いイベントがメインだ。

何度やってもイケメンたちとの出会いイベントは楽しい。

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