私は自他共に認める平凡な女子大生だ。

私には推しているゲームがある。フルダイブ型VR乙女ゲーム「きらきらプリンス」だ。

タイトルのセンスは最悪と言ってもいいと思う。ネットでもそれについては散々言われていた。

それにもかかわらず、このゲームは大ヒットした。このMMO全盛のご時世に、ソロプレイ専用乙女ゲームなのに、ミリオンを達成した。

内容はありきたりなファンタジー世界の学校を舞台にした乙女ゲームだ。

それをフルダイブ型VRでやるという技術の無駄遣いも甚だしいことをやってのけた。

とにかくプレイヤーに甘い世界で、出てくる攻略対象キャラも手垢まみれのテンプレばかりなら、イベントもテンプレまみれだ。

それでもなおヒットしたのは、フルダイブ型だからだ。

近くに寄れば息遣いや体臭すら感じるリアリティ溢れるキャラクターに、甘い言葉を囁かれたり、抱きしめられるのは麻薬も同然だった。

SNSではお小遣いで買えるホストクラブとまで言われた。

主人公は今時珍しくキャラメイクはできないし、キャサリン・ゴールデンハートの名前も変えられない。明るく元気なラブコメ少女漫画ヒロインを思い浮かべて欲しい。多くの人が思い浮かべるであろうテンプレキャラ、それが自分だ。

それが男性のJKになりたい欲というよく分からない琴線に触れたらしく、SNSでのアンケートでは男のプレイヤーも結構いるようだ。

まぁ、一部の男性ユーザーからは鉄壁スカートは絶対にめくれないし、胸を触った感触がおかしいと文句を垂れ流す者もいた。

でもJKになりたいガチ勢に散々にこき下ろされて、そういう楽しみ方をする者は少ないようだ。

疲れた男性でもJKになってイケメンに甘やかされるのは癒やしになっていたようだ。

講義が終わり家に向かった。

ご飯は友達と食べてきたから、あとはお風呂に入って寝るだけだ。

ゲームをやりたいので、軽くシャワーを浴びる程度にして起動した。

今日はまた、最初からやろう。

今度は誰を攻略しようかな、と考えながらゲームにダイブした。

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