公爵令嬢は死に戻る⑨

女の髪を掴んで引きずりながら王城へ向かう道すがら、父の馬車に出会った。

馬車の中から父に声をかけられた。


「無事か?何があった?」


「国王陛下に報告すべきことがあります」


そう告げると、同行することになった。

当初は正面から城に入って、近づいてきた連中を皆殺しにした上で、王を斬り殺そうと思っていた。

でもこうやって会えるのは楽で良い。王の下に辿り着く前に逃げられずに済む。

色々聞かれたけど「国王陛下の前でないと話せません」と適当に誤魔化した。

隣に置いてある女の素性も気になっているようで、そちらをチラチラと見ていた。

心配しなくてもいいんだよ。すぐに教えてやるから。


謁見の間に向かい、王の前に立った。

父は跪いていたが、私はもうすぐ死体になる男に跪く必要なんてない。

女を王の前に放り投げた。


「この女に男を寝取られて婚約破棄されました」


王と父は意味がわからないと顔で語っていた。


「そして私はこの女には何もしていないにもかかわらず、罪をでっちあげられました」


「待て待て、フレデリカ嬢、何を言っている?」


王は手を挙げて、私の言葉を止めようとした。

それを無視して話を続けた。


「私の味方は誰もいませんでした。竜害から守った領地の人間も、縁を取り持った人間も、誰も彼も私を見捨てました」


王も父も絶句した。


「なので皆殺しにしてきました」


謁見の間を沈黙が包んだ。

王の問いかけは心底つまらないものだった。


「……それで君は何をしたいんだ?」


「国中の王侯貴族を皆殺しにします。私は貴族どもが大嫌いなのです」


隣で跪いていた父が震える声で私に話しかけてきた。


「フレデリカ……私と共に罪を償おう」


言い終わった瞬間、双剣を抜き父を八つ裂きにした。


「お父様、残念です。正解は『私も手伝おう』ですよ」


剣についた血を振り払い、死体を見下ろした。


「すぐに母も兄も妹もそこに送りますので、寂しがることはありませんよ」


王の方へ向き直り、呪文を唱える。


「アイスプリズン アブソリュートゼロ」


氷の牢獄で王城を包み込み、誰一人として逃げられないようにした。

近衛騎士団長と近衛騎士の連中が王の前に立った。


「お前たちごときで私を止められるとでも?」


魔法のことごとくを防御魔法で防ぎ、アイシクルランスで騎士どもを串刺しにした。

最後には騎士団長が残った。


「フレデリカ嬢、やめてくれないか?」


「邪魔するなら殺す。その代わり貴方が王を殺せば見逃してやりますよ」


騎士団長は一瞬で私に肉薄すると私の腕を切り落とした。

さすが、騎士団長になっただけはある。

女にうつつを抜かしたあげく、私に撫で斬りにされたヘタレ息子とは格が違う。

だけど、腕を切り落としたくらいで隙を見せるのは甘いとしか言えない。

一体私の何を見てきたんだろう。

訓練でも腕や足を切られるなんて日常だった私には、腕を切り落とされるなんて大したことはない。

残った腕に持っている剣で首を刎ねた。

治癒魔法を使って腕をくっつけて王の前に立った。


「許しを乞うても無駄か……」


王は死を受け入れる準備はできたようで、背筋を伸ばし目を瞑った。

仮にも少し前までは忠誠を誓った王だ。

せめてもの情けと、覚悟に対しての敬意として楽にあの世に送ってやろう。

上段に長剣を構え、玉座ごと真っ二つに脳天から切った。


王を斬り、女の髪を掴んで謁見の間を出た。

私が助けてくれると勘違いし助けを求めてきた連中のことごとくを切り捨て、アイスプリズンに自分だけが出られる穴を開けた。

 

「ゼロディバイド」


呪文を唱えると城は砂で作った城のごとく崩れ落ちた。


もうこいつを持ち歩くのも面倒だ。

全身を凍らせてから粉々に砕いた。

性根の腐った女だったけど舞い散る破片はとても綺麗だった。


「アハハハハ、全部、ぜんぶ、ぜーんぶ、壊して壊して壊し尽くしてやる」


貴族どもが住む貴族街へと歩を進めた。

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