公爵令嬢は死に戻る⑦
こうして、ついにあの日がやってきた。
卒業パーティの宴席で私は殿下に婚約破棄をされた。
別にそんなのはどうでもいい。あの男にそんな価値はない。
何を根拠にしているのかは知らないが、学校の成績でも圧倒的に上の私よりも、あの女の方が優れていると勘違いしているのは哀れすぎて言葉も出ない。
そして、また、謂れのない罪を被せられた。
だが今回は周囲の人たちが私のアリバイを証言してくれるだろう。
少なくとも私が冤罪で処刑なんてあり得ないはずだ。
……いくら待っても「それは冤罪だ」「そんなことはやっていない」と言う声はあがらなかった。
これだけ頑張ってもあの女の手練手管に抗うことはできないのか。
いったい、どうやってこれほどの人間の心を掌握できたのか……
心底わからない。わからない、わからない……
きっと、親も兄も妹も貴族たちも民衆もあの女の手練手管に嵌っているのだろう。
焼き付いて離れないあの日の光景が脳裏に浮かんだ。
雨が降りそうな曇り空。私を罵倒する声。そして、断頭台に首を押さえつける男。
絶対にそんなことさせるか‼︎
「何か申し開きはあるか⁉︎」
殿下は私を見下ろして怒鳴りつけた。
なぜかあの女は男に縋りついて男を止めているようだ。
「シルバーレイク、竜殺しの恩を忘れたか⁉︎」
「ムーンウィンド、仲を取り持った恩を忘れたか⁉︎」
恩着せがましいことはしたくなかった。だけど、今はそうする時だ。
次々と今が恩返しの時だと名前を呼び続けた。
でも、誰も声をあげなかった。
私の叫び声だけが響いているだけだった。
私の叫びが止まるとただただ静かになった。
結局こうなるのが運命なのか。
バカバカしい。私が皆の信頼を得るためにしてきたことは全くの無駄だったんだ。
結局最後にはどいつもこいつも私を裏切り見捨てるんだ。
憎悪が、怨嗟が、殺意が心に注がれ、遂に心が壊れる音が聞こえた気がする。
魂が真っ黒に染まったように感じる。
今度こそなんて考えていた自分の間抜けさに笑いが込み上げてきた。
「アハハハハハハハハハハ」
高笑いすると周囲が静まり返った。
それでも私に味方する者は現れる様子はない。
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