第31話 戦後のあれこれ③
領主代行代理のエドガーとの話が思いのほか早く終わり、僕たちは城門の方へ向かった。
しばらく歩くとミリアたちと合流できた。シズクが伝えてくれた指示通り、城門から市街地を目指していたようだった。。
「マスター!会えてよかったー!」
ミリアが駆け寄ってきて、僕に抱きついてきた。リリィやベアトリスたちも、口々に僕の無事を喜んでくれる。
「離れていて、マスターが心配だったよ」
「本当にご無事で何よりです」
みんな同じようにモンスターに襲われていたはずなのに僕の心配をしてくれている。その優しさが胸に染みた。
「みんな、ありがとう。こんな所にいるのもあれだし、まずは朝食にしよう」
僕はそう言って、みんなを連れて歩き出した。
「もうー、昨日の夜は怖かったんだからー!」
ミリアが泣き言を言いながら、昨晩の話を始めた。
「マスターの指示通り、城門から離れて歩いてたら、後ろから悲鳴が聞こえてきて……。振り返ったら、もうモンスターがいっぱいいたんだよ!」
「はい、私も見ました。何もないところから、突然現れたように見えました」
ベアトリスが、真剣な顔で言った。
ゲーム時代は画面の端から現れるのが当たり前だったから、特に気にしていなかった。
だが、現実では突然現れるという仕様になるのかと、ゾッとした。
そして、僕は心に誓った。
もう二度とこの世界でマップのスタートボタンは押さない、と。
そうこうしている間に街の中心部に着いた。
しかし、昨晩の襲撃の影響か街は閑散としており、昨日のような賑わいはなかった。店もほとんど開いておらず、結局僕たちはまた倉庫のパンを食べることにした。
「またパンかー……」
リリィが不満そうに口を尖らせた。
「今夜こそは、美味しいものを食べよう。だから、もう少し我慢してくれ」
僕はそう言って、みんなをなだめながら、宿を探した。
なんとか昼過ぎに、みんなの宿を決めることができた。
何より一人銀貨五枚以内で収めることができ、僕はホッと胸を撫で下ろした。
これですぐに資金がショートするリスクはなくなった。
夕飯はそれぞれの宿でとってもらうことにして解散した。
僕たちも夜明け亭に戻り、部屋で一息ついていると、メニュー画面にアリアから通話が入った。
「え、ミリア以外からも通話できるのか……?」
驚きながら出ると、アリアの凛とした声が聞こえてきた。
『マスター。ご報告がございます。軍の大隊長として採用されました』
「大隊長!?よくやった、アリア!」
僕は思わず声を上げた。
『いえ、マスターの指示に従ったまでです』
アリアは、少し恥ずかしそうに答えた。
「いや、本当にすごいことだ。いきなり大隊長という地位を得たんだぞ。さすがアリアだ」
僕は心からアリアを褒めた。
『はい。ありがとうございます』
「アリア。君にはそのまま軍で勤務して、何か情報があれば教えてほしい」
僕はそう伝え、アリアからも「了解しました」と返事をもらって通話を切った。
これで軍にツテができた。あとは明日の朝、領主代行代理にどう話すかだ。
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