第29話 戦後のあれこれ①
僕たちは、夜明け亭を出て、ミリアたちがいるという東側の城門へと向かった。
しばらく歩くと、モンスターたちが侵入したであろうエリアに差し掛かった。
この辺りは、まだ城門から距離があるためか、人の死体こそなかったが、所々窓や扉が破られた建物があり、壁には赤黒いシミがいくつもあった。
「……みんな、逃げられたのかな」
僕がそうつぶやくと、ツバキが静かに頷いた。
「おそらく。この辺りの被害はそこまで大きくないようです」
さらに進んでいくと、ついに人の死体があった。
モンスターの死体を見たときは自分たちとは見た目も形も違うため、あまり死体という感覚が薄く、そこまで強い感情は抱かなかった。だが、自分たちと同じ、人間の死体はやはりくるものがあった。
特に今回は傭兵たちの時と違い、自分が死ぬかもしれない経験をしたことで、死体を見ると一気に血の気が引いていくような感覚に襲われた。
僕は思わず立ち止まってしまった。
「マスター、大丈夫ですか?」
ユズリハが、僕の顔を覗き込んできた。
「大丈夫。問題ないよ」
僕はそう言って、足を進めた。
街の建物も、先ほどより破損がひどく、所々爆発したように崩れているところもあった。
ん?爆発……?
僕はユズリハの弓を思い出し、青ざめた。
もしかして、この被害の一部はユズリハによるものではないか……?
僕はユズリハにバレないように、そっと彼女の顔を見た。彼女は何も知らないように、きょとんとした顔で僕を見上げていた。
これは……うん!追及されても知らぬ存ぜぬで通そう!
そんなことを考えているうちに、城門だったであろう場所が見えてきた。
城壁が崩れた結果なのか、山のように石が積み重なっており、そこから人が行き来しているのが見えた。
石の山を越えて城壁の内外を行き来している人がいても誰も咎めてはいないように見える。
「ミリアが言ってたのは、こんな感じだったのか……」
僕はそうつぶやいた。
石の山の下の方には、大勢の人が集まっていた。街に入ってきた人や、片付けをしている人だろうか。
僕はようやくミリアたちと会えると安堵しながら、近づこうとした。
その時だった。
「あなたは!」
そう叫んで、何人かの兵士たちが、僕たちに駆け寄ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます