第28話 方針検討②

​アリアを送り出した後、僕は部屋に残ったツバキ、ユズリハ、シズクと顔を合わせていた。窓の外はすっかり明るくなっていた。


​「さて、残りの子たちはどうしようか…」

​僕は頭を悩ませた。

​リンファやリリィのようにポーションや武器製作ができる生産スキルを持った子たちは手元に残しておきたい。

だが、他の子たちをどうするか。

今回のモンスター襲来で僕自身は戦力にならないことを改めて思い知った。

​やはり、予定通り商人をやろう。そして自分の商会を立ち上げようと思った。

そこでみんなを従業員として雇おう。

​しかし、遠い場所から不意に転移してきた人間がいきなり大量の従業員を雇うのは不自然だ。

何より、まだ固定客もなく、売り上げの見通しも立たない。

この状況でみんなを養っていけるのか不安でしかなかった。


​「うーん……」

​僕は腕を組んで唸った。

​「マスター、何かお悩みですか?」

​僕の様子に気づいたツバキが、心配そうに声をかけてきた。

​「ああ、今後のことについてみんなの意見を聞きたいんだ」

​僕は正直に悩みを打ち明けた。

​「僕はザックたちに言ったようにこの世界で商人になって商会を立ち上げて、みんなを従業員として雇うかと思っているが、できるか分からないし、正直不安がある。やはり他の方法を探すか……」

​僕の言葉にユズリハはすぐに反応した。

​「えー、難しいことはわかんないけど、ユズリハはマスターについていくよー!」

​無邪気に笑うユズリハに、少しだけ心が軽くなる。

​その一方で、シズクは恐ろしい提案をしてきた。

​「今回の戦闘を見て、この街の戦力は大したことないと判断しました。いっそのこと、このまま街を占領して、私たちの国を作ってはいかがですか?」

​「いや、それはちょっと……」

​僕はひきつった笑みを浮かべた。

それを聞いてシズクはちょっとがっかりしたように見えた。

えっ、まさか本気だった!?


​そんな僕たちを見ていたツバキが口を開いた。

​「マスター、生産スキルを持った子たちは、商会の従業員として。そして、戦闘をメインとする子たちは、傭兵としてギルドに登録させるのはどうでしょうか?」

​ツバキの提案に、僕はハッと顔を上げた。

​「その手があったか!」

​そうだ、ザックと話していた時に、傭兵としてうちの子たちを派遣するのもアリかと思っていたことを思い出した。

お金が稼げる上に、この世界のことを知るための貴重な情報を得られることもあるかもしれない。

​「よし、今度ザックと会った時に、傭兵について詳しく聞いてみよう」


​そう決めたところで、視界に「ミリア」と表示されている画面が現れた。

​『マスター!今、街の中に入れました!』

​ミリアの声が聞こえてきた。

​「大丈夫だった?何か問題はなかった?」

​僕がそう尋ねると、ミリアは少し呆れたような声で答えた。

​『城門が壊れてて、実質出入りし放題みたいです。兵士たちも、それどころじゃないみたいで、入門の検閲もしてませんでした』

​「いいのかそれ……」

​僕は思わずつぶやいた。

まぁこんなの状況だし、仕方ないのだろう。


しかし、これでようやく全員が合流できる。

​「わかった。城門の近くの安全なところで待機していてくれ。今から僕たちが向かう」

​僕はそう言って通話を切った。

​「よし、行こう!」

​僕はツバキたちを連れて、夜明け亭を後にした。

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