第25話 夜襲⑤
僕はマップ画面に釘付けになっていた。
遠くから「ドンドン」という鈍い音が聞こえてくる。
サイクロプスのアイコンが城門のところにいることを考えると、あれは城門を攻撃している音なのだろう。
やめてくれ……そう思った。
しかし、その願いも虚しく、サイクロプスのアイコンがいたところから、大量のモンスターアイコンが、一気に城壁内になだれ込んできたのだ。
「城門が……破られたんだ」
僕はそう確信した。
冷たい汗が背中を伝う。
今までゲームも含めて、常に安全なところから眺めるだけだった。
しかし、城壁が破られたことで、一気に当事者になったという実感が湧いてきた。
だが、大丈夫だ。僕は自分にそう言い聞かせる。
僕の隣にはレベル100である主力メンバーのツバキとユズリハ、そしてシズクがいる。
彼女たちならあの程度の敵簡単に蹴散らせるはずだ。
そんな僕の不安を読み取ったのか、ツバキが凛とした声で言った。
「マスター、ご安心ください。私たちが必ず、あなたを守りきってみせます」
「そうだよ、マスター!私が全部やっつけちゃうから!」
ユズリハも元気にそう言ってくれた。
そこで、僕はハッとし、みっともない姿を見せてしまったと反省した。
「それで、これからどうする?」
シズクが、静かな声で尋ねてきた。
室内にいるとユズリハたちの攻撃が制限されてしまう。
僕はひとまず外に出ようと決めた。
「外に出よう」
しかし、僕たちが部屋の扉を開けると、そこにはパニックになった宿泊客たちが我先にと逃げ惑う姿があった。廊下は人で溢れかえっており、とても外に出られる状況ではなかった。
「どうしよう……」
僕は途方に暮れた。
その時、ユズリハが閃いたように言った。
「マスター!屋上に出ようよ!屋上からだったら、敵を射ることができるよ!」
「ユズリハ、いい考えだ!そうしよう!」
僕はユズリハの提案に飛びついた。
「屋上の方が動きが取れますね。私も賛成です」
ツバキもユズリハの提案に賛成した。
僕たちはパニックになった宿泊客をかき分け、屋上へと続く階段を駆け上がった。
屋上に出ると、そこには阿鼻叫喚の光景が広がっていた。
遠くの城壁からは、無数のモンスターが街へと侵入してくる。
そして、街中では人々が悲鳴を上げながら逃げ惑い、それを追うモンスターたちが次々と人を襲っていた。
僕は目の前に広がる地獄のような光景に思わず息をのんだ。
これが僕が引き起こしてしまったものなのだろうか。
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