第20話 酒場にて②
この街は中世ヨーロッパ風であるため、料理はあまり美味しくないと勝手にイメージしていたが、肉料理には塩コショウが効いて案外美味しかった。
中世ヨーロッパでは胡椒は同じ重さの銀と交換できる高級品と教科書で習ったいたが、ここでは普通に使われてそうだった。
ここがゲーム世界だからそのあたりが適当なのか?
でも、銀貨1枚が1000円程度の価値しかないことを考えると胡椒が同じ重さの銀と同価値なら、この世界では案外そこまでの高級品ではないのかもしれない。
そう考えながらご飯を食べていると、この世界のアイテムやその価値がどれくらいかを全然知らないなと思った。
主力商品にしようとしている回復ポーションの素材がそもそもこの世界に存在するのかも気になってきた。
「一つ聞きたいことが……」
僕はそう言って、声を潜めた。
回復ポーションのことは伏せたい。
「ヨモギの葉ときれいな水という物があるのか知りたいのですが……」
僕がそう尋ねると、ザックは不思議そうな顔をした。
「ヨモギの葉は知っているが、きれいな水は普通の水と違うのか?」
「ま、まあ、そんな感じです」
僕は再び言葉を濁した。僕も違いは分からない。ゲームではそういう名前のアイテムとして存在していたからだ。
「なるほどな。それなら、マルコに相談した方がいい」
ザックはそう言って、グラスを置いた。
「どういうことですか?」
僕が尋ねると、ザックは言った。
「マルコの商会では、周囲の村にヨモギの葉の作付けを依頼し、買い取って生薬の材料として商店などに卸しているんだ。今回輸送した荷にも、ヨモギの葉があるそうだ。それに大商会だからな。俺の知らない物も色々取り扱っているだろう」
「ええっ!?」
僕は驚きの声を上げた。回復ポーションの素材が、マルコの商会の荷物の中にあったとは。
それにRPGゲームとかでは薬草取りが冒険者ギルドの定番クエストとしてあるため、村が生産しているというところにも驚いた。
「傭兵ギルドで、ヨモギの葉の採取依頼のようなものは無いんですか?」
僕がそう尋ねると、ザックは笑った。
「ハハハ!おいおい、普段使われるような薬の素材が、そんな運任せな採取方法なわけないだろう!」
ザックはそう言って、僕の肩を叩いた。
「確かに……」
僕は納得した。ゲームの世界ではモンスターを倒したり、採取ポイントで採取したりするが、現実ではそうはいかない。
「それにしても、残念だぜ」
ザックはそう言って、悲しそうな顔をした。
「え?」
僕が尋ねると、ザックは言った。
「君たちは強いから、傭兵に誘おうと思っていたんだがなぁ」
ザックの誘いは嬉しいが、ツバキたちはともかく、僕自身は戦えないから僕が傭兵になるという選択肢はない。
お腹一杯になったのか、傭兵たちに先の戦闘での活躍を持ち上げられて照れくさそうに話してるユズリハを見てると、うちの子たちの何人かを傭兵として派遣するのはありかもしれないと思ってきた。
傭兵についても聞いてみよう。
そう考えていると、目の前にミリアと表示されている画面が飛び出してきた。
「んがっぁ!?」
変な声を出してむせてしまった。
「おい、どうしたんだ?」
ザックが心配そうに聞いてきた。
急いでビールを飲んで押し込んで、
「いや、ちょっと急な用事を思い出しまして、先に宿に帰ります」
「そ、そうか。俺たちはこの隣の宿にいるから、何かあったら来てくれ」
そういうザックにお礼を言いつつ、金貨1枚を置いてツバキたちを連れて出ていった。
後ろでザックが何か言っていたようだが、一旦聞こえないふりした。
「どうしんたんですか?」
そう聞いてくるツバキにミリアたちから連絡が来たと話し、とりあえず路地裏に入った。
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