第15話 要塞都市②
僕たちは、マルコに別れを告げ、宿を探すため、街の中を歩き始めた。馬車が建物の中に入っていくのを見てると、同じく馬車から降ろされたザックたち傭兵団の姿があった。ザックは僕たちに気づき、軽く手を上げてくれた。
僕も手を振り返すと、ザックは少し微笑み、傭兵団の仲間たちと話し始めた。彼らの表情には、街にたどり着いた安堵と、失われた仲間の悲しみが入り混じっていた。
僕たちはザックたちに別れのあいさつをし、マルコに教えてもらった宿の場所を目指して歩き始めた。
しかし、その前に、森に潜んでいる仲間たちを呼ばなければならない。
僕は人気のない細い裏道に入り、周囲に誰もいないことを確認した。
「よし。シズク、聞こえるか?」
僕はメニュー画面を操作し、シズクに話しかけた。
「……何?」
僕の背後から、静かな声が聞こえた。
「うわっ!」
僕は驚いて振り返った。そこにはいつの間にかシズクが立っていた。
彼女の姿は裏道の薄暗い影に溶け込んでおり、まるで最初からそこにいたかのように自然だった。
「マスター。私の存在に気づかなかったようですね。まだまだ訓練が必要です」
シズクは、いつもの冷静な口調で僕に言った。
「ごめんごめん、びっくりしたよ。さすがだな、シズク」
「ありがとうございます。それで、御用件は?」
シズクは真面目な顔で僕に尋ねた。
「ああ、みんなを呼んでほしいんだ。それと、これを渡しておいてくれ」
僕は倉庫からグレンからもらった金貨の一部を取り出し、シズクに渡した。
金貨はずっしりと重い。
「お金がないと、何かと不便だからな。みんなで分けて使ってくれ」
「了解しました。すぐに皆をこちらに誘導します」
シズクはそう言って、金貨を恭しく受け取った。
彼女は金貨の重さに驚くこともなく、淡々と僕の指示をこなす。
「頼んだぞ」
「はい」
シズクは再び影の中に消え、僕はメニュー画面からミリアに連絡を取った。
『もしもし、ミリア。僕だ』
『マスター!連絡が遅いですよ!心配したんですからね!』
通話が繋がるなり、ミリアから怒涛の愚痴が始まった。
『ごめんごめん。色々あって……』
僕はミリアをなだめながら、街に到着したこと、そして回復ポーションを売って金貨を手に入れたこと、さらにはマルコたちとの会話で得られたことをかいつまんで教えた。
『ええっ!?金貨百枚!?すごいじゃないですか、マスター!』
ミリアの興奮した声が、通話越しに聞こえてくる。
『それと、シズクにみんなを呼ぶように頼んだから、もうすぐそっちに向かうと思う。みんなを連れて、マルコさんに教えてもらった宿に来てほしい』
『はい!了解しました!すぐにみんなに伝えます!』
ミリアの元気な返事を聞いて、僕は通話を終えた。
「はぁ……」
僕は安堵のため息をついた。これで、僕たちの最初の拠点となる場所が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます