第10話 ファーストコンタクト⑤
ザック立ちとやり取りをしていると、遠くからその光景を見ていた一人の商人が、僕に近づいてきた。
「おい、あんた!そのポーションを売ってくれ!」
彼は目を血走らせ、僕に詰め寄ってきた。
「申し訳ありませんが、非常に希少なものでして……」
商人の態度にドン引きしつつ、ザックも貴重な物と言ってたし、僕はそう言って断ろうとした。
「希少なのは知っている!いくらだ?金なら出すぞ!」
僕は困惑した。どうやって、この男を追い払えばいいのか。
すると、そこへマルコが近づいてきた。
「やめなさい、グレン。彼は我々の命の恩人だぞ」
マルコはグレンを鋭く一喝した。
「だが、マルコ!あのポーションがあれば、どれだけ儲かるか!」
「うるさい!出発するぞ!」
マルコはそう言って、グレンの肩を掴み、無理やり馬車へと戻した。グレンは悔しそうな顔をしつつも、マルコに従って馬車に入っていった。
「彼が不愉快な思いをさせてしまったことを、心よりお詫び申し上げます」
マルコは僕に深々と頭を下げた。
「いえ、大丈夫です。お気になさらないでください」
僕はそう言って、マルコに笑いかけた。
「では、準備が整いました。どうぞ、こちらの馬車にお乗りください」
マルコはそう言って、一台の馬車を指差した。
僕たちは馬車に乗り込み、街へ向けて出発した。
馬車の中には、マルコと、先ほどのグレン、そしてもう一人の若い商人がいた。グレンはまだ不満そうな顔をしている。
「彼は少し商いに貪欲なだけで、悪い男ではないのですが……」
マルコは僕に、グレンについて説明してくれた。
「いえ、気にしていませんよ」
僕はそう答えた。
「ところで、ロンメルさん。あなたは本当に、お宝を探して旅をしているのですか?」
マルコが僕に尋ねてきた。
「ええ、まあ……」
僕は言葉を濁した。嘘をついているのがバレるのではないかと、少し不安になる。
「ただ、遺跡に入ったはずなのにこの森の中に転移してしまったようで、ここがどこだかさっぱりでして……」
そして嘘を重ねた。遠いところからいきなりここに来たということにすれば、多少常識がなくても不自然に思われないだろうと思ったからだ。
「そうなのですか!転移というのは初めて聞きましたが、そのようなものがあるとは世界は広いですね。」
「えぇ、まぁ」
自分から見ても怪しさ満点だったが、マルコはそれ以上は追及してこなかった。
代わりにこの国のことについて色々と話してくれた。
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