第9話 ファーストコンタクト④
どうしようかと悩んでいると近くで傭兵たちに指示を出してるザックが目に止まった。
傭兵たちがいる方向に行き、ザックに話しかけた。
「目的地までどれくらいかかるんですか?」
僕がザックに尋ねると、彼は少し考えた後、
「このまま順調に進めば、半日あまりで到着できるかと」
半日か。それなら、あとから合流するのも可能か。
僕はツバキたちのところに戻り、ミリアに通話を繋いだ。
『もしもし、ミリア。僕だ』
『マスター!大丈夫ですか!?』
『ああ、大丈夫だ。今、行商人の護衛として雇われた。これから街に向かうから、みんなはそこで待機していてほしい』
『はい!』
ミリアは元気な声で返事をした。
『シズクには隠れてついてきてもらって、街に着いたら、彼女に街までの道案内してもらおうと思っている。』
『はい!了解しました!』
この旨をシズクにも伝え、通話を終えて僕はザックのところへ戻った。
ザックは、仲間たちの手当をしていた。しかし、重傷を負った者も多く、そのうちの一人を悲しそうな顔で見つめている。
「残念だが、この傷じゃ、もう助からないかもしれん……」
ザックの言葉に、僕は胸が締め付けられた。
傭兵たちのステータスを確認すると、動ける人たちはHP30%以上あるが、この人はHPが10%を切っていた。
僕の倉庫にはHPを回復できる回復ポーションがあるが、ゲームのアイテムが使えるのか。
死にそうな仲間がいるのに回復ポーションを使わないのを見る限り、この世界には存在しないアイテムではないかと考えてしまう。
「マスター、ポーション使わないの?」
葛藤している僕にユズリハが声をかけてくる。
「!?、回復ポーションをお持ちなのですか!?」
ザックが食いぎみに聞いてきた。
よかった。この世界にも回復ポーションはあるみたいだ。
「大変貴重なものとは分かっていますが、良ければ譲ってもらえないだろうか。代金は時間をかけても必ずお支払します!」
「いやいや、そこまでかしこまらなくてもお役にたてるならぜひ使ってください」
回復ポーション(中)をザックに渡すとザックはすかさず倒れていた重傷者にかけた。
すると、傷口が光を放ち、少しずつ塞がっていく。そして、倒れていた男は、わずかに顔色を取り戻し、ゆっくりと目を開けた。
「ぐ……あ……」
男は苦しそうに呻いたが、傷は確かに塞がっていた。
回復ポーション(中)はHPが30%回復するからそのうちこの人も自力で動けるようになるだろう。
「よかった!本当によかった……」
ザックが男を抱きしめた。
その後、傭兵たちは他の負傷者も手当てをし、死体を馬車に収納していた。
その間、何度もザックに感謝を言われた。
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