第7話 ファーストコンタクト②

​僕たちは慎重に森の中を進んでいく。マップ上のアイコンは、僕たちの方へは向かってこない。そして、しばらく進んだところで、マップ上のアイコンの動きが止まった。

​どうしたんだろう?

​僕はユズリハに声をかけた。

​「ユズリハ、そろそろ見えそうか?」

​「……えっと、待ってね。今確認するから」

​ユズリハはそう言って、目を細めた。彼女のパッシブスキルである『水鏡の目』は、遠くの敵を捉えることができる。

​数秒後、ユズリハがハッとした表情になった。

​「見えた!行商人みたい!たくさんの荷物を持ってる!」

​「良かった……。やっぱり人間だ」

​僕は心底安心した。しかし、ユズリハは続けて、僕の不安を煽るような言葉を口にした。

​「でも、オーガに襲われてる!」

​「何だと!?」

​僕は思わず叫んだ。マップを確認すると、確かに人のアイコンが、赤いオーガのアイコンに囲まれている。

​「オーガが3体いる!」

​「よし、みんなで行くぞ!」

​僕はそう言って、駆け出そうとした。だが、ツバキが僕の前に立ちはだかる。

​「マスター、お待ちください。全員で出ていけば、警戒されるかもしれません」

​「でも、助けないと……」

​「はい。助けましょう。しかし、冷静に」

​ツバキの言葉に、僕は我に返った。彼女の言う通りだ。いきなり大勢で出ていけば、行商人たちを驚かせてしまうだろう。

「そうだね。少し興奮して周りが見えてなかった。ごめん」

「まずは私たちも視認できる距離まで近づきましょう」

「うん、まずはみんなで少し近づこう」


スキルを持たない自分でも視認できる距離に近づき、息を潜めて状況を確認する。

商隊の護衛を思われる武器を持った人たちがオーガと戦っているが、すでに何人かがやられているようだった。

​「オーガのレベルは……」

​ミリアが、僕に代わってステータスをチェックした。

​「レベルは30みたいです!」


さっきの戦闘を考えるとユズリハ一人でも全く問題なさそうだ。

「ユズリハ、悪いが一人でオーガを倒してくれないか?」

​「え?私一人で?」

​ユズリハが驚いたように僕を見た。

「うん、森の中から大勢で出ていくと流石に怪しまれる。距離を考えても弓使いの君が一番適任だと思う。それにあの程度の相手なら楽勝でしょ?」

「まぁね!りょーかい!サクッとやってくるよ!」

​ユズリハはそう言って、静かに弓に矢をつがえた。狙いを定め、引き絞る。

前回同様「ズボッ、ズボッ」と、2本の矢がそれぞれのオーガの頭に突き刺さった。


残り1体がユズリハの存在に気づき、逃げ出した。

​「追跡の矢!」

​ユズリハの弓から放たれた矢は、まるで生きているかのように軌道を変え、オーガへと向かって飛んでいった。そして、オーガの腹部に突き刺さった。

​「爆散!」

​矢はオーガの腹部で爆発し、肉塊と化して飛び散った。

矢が異常な軌道を描いた上に爆発した……?


​「終わったよー!」

​ユズリハの元気な声が、森の中に響き渡った。

​僕たちは、森の中で安堵の息をつく。そして、いよいよ行商人たちとの接触の時が来た。

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