第6話 ファーストコンタクト①

​「さて、と」

​僕は、目の前に浮かぶ半透明なメニュー画面に指を伸ばした。

​「マスター、何をされているのですか?」

​隣にいるツバキが僕に尋ねた。

​「ああ、これはね、ゲームのメニュー画面みたいなんだ。アイテムの管理とか、キャラの状態確認ができるんだ」

​「へぇ〜!便利そうですね!」

​ミリアが目を輝かせた。

​「試しに、何かできるかやってみるよ」

​僕は画面をスクロールさせ、『キャラクター一覧』という項目をタップした。すると、僕が召喚した27人のキャラたちがアイコンで表示される。

さらにはゲーム時代にはここにいなかったミリアのアイコンも表示されている。

​「もしかして、これって……」

​僕は試しにユズリハのアイコンをタップした。

​「なるほど、キャラの状態やステータスが見れるのはゲームと同じか」

そう呟いていると

​『うわ!マスターの声だ!どうしたのー?』

!?

「もしかしてこっちの声が聞こえるのか?」

​『うん!聞こえるよー』

遠距離でも通話できるのか!これはいい発見だ。

​「今、そっちはどんな感じだ?」

​『うーん、特に何も変わったことはないかな。シズクと二人で、街を探してるんだけど……』

​『しっ、ユズリハ!敵に聞かれるかもしれないから、大声出すんじゃない!』

​小さな声で、シズクの注意する声も聞こえてくる。普段は掴み所のない彼女だが、偵察任務中はプロの忍者だ。

​「わかった。無理はするなよ。何かあったら、すぐに連絡するから」

​『はーい!』

​通話を終え、次にシズクのアイコンをタップする。

​『……マスター。何か緊急事態でしょうか?』

​さっきとは打って変わって、冷静で落ち着いた声が聞こえてきた。シズクの気まぐれな性格も、任務中は真剣そのものだ。

​「いや、違うんだ。ただ、この機能が使えるか試したくて。そっちは順調か?」

​『はい。今のところ、特に危険な敵は確認していません。ユズリハと二人で、街らしきものを探しています』

​「ありがとう。気をつけてな」

​『はい』

​通話を終え、僕はほっと息をついた。この機能があれば、離れていても彼女たちの状況を確認できる。これで少しは安心だ。

キャラたちとの通話機能に興奮しながら、僕はさらにメニュー画面をいじってみた。すると、『マップ』という項目を見つけた。

ゲーム時代はここから戦闘を行うステージマップの選択をするのだが……

​これも試しにタップすると、目の前にこの一帯の立体的な地図が浮かび上がった。緑色の広大な森の中に、僕たちの位置を示すアイコンが表示されている。そして、僕たちとは別の方向に、二つのアイコンが動いているのが見えた。

​一つは、見慣れた僕たちのキャラアイコン。間違いない。ユズリハとシズクだ。もう一つは、人の形をしたアイコンだった。

​「人か……?」

​僕は思わず声を漏らした。

​この世界に来てから、僕はモンスターとゲームのキャラ以外、誰も見ていない。この人のアイコンは、この世界で初めて出会う人間かもしれない。

​しかし、人アイコンは、ユズリハたちとは逆の方向へと進んでいる。

​僕は慌てて、ユズリハとシズクに再度通話を繋いだ。

​『ユズリハ!すぐ戻ってきてくれ!』

​『え?どうしたの?何かあった?』

​『後で説明する!とにかく、早くこっちに戻ってきてくれ!』

​ユズリハは驚いていたが、僕の緊迫した声に、すぐに戻ることを了承してくれた。

​しばらくして、ユズリハとシズクが戻ってきた。

​「マスター、どうしたんですか?」

​ユズリハが息を切らせて尋ねる。

​「実は、このマップに、僕たち以外の人間のアイコンが表示されてたんだ。でも、君たちと逆の方向に動いてるから、まずは合流したかったんだ」

​「人間……ですか?」

​ツバキが驚いたように僕を見た。

​「うん。この世界で、僕たち以外の人間に会えるかもしれない。」

​この世界にいる人間とのファーストコンタクトに僕は興奮を隠しきれなかった。

​「さあ、みんなで行くぞ!」

​僕がそう言うと、キャラクターたちは一斉に僕の周りに集まった。

​全員で人アイコンの方向へと進み出した。

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