第4話 現状把握①

​僕は、ここはゲームの世界かそれに類する世界ではないかと考えていると、ツバキが声をかけてきた。

​「マスター、これからどうしましょう」

​「うーん、まずは現状を整理しようと思う」

​僕は、落ち着いて状況を確認することにした。


​「最初に、ツバキは僕のことを覚えてるでいいよね」

​「もちろんです!マスターは私たちの創造主であり、指揮官だと認識しています」

​ツバキは淀みなくそう言ってくれる。それに安心感を抱きつつ、同時にモンスターが跋扈するこの世界において、彼女たちを頼らなければならないだろうという不安も抱いている。

果たして、ゲームキャラとそれを安全地帯から動かすだけのプレイヤーという制約が無さそうなこの世界でも、彼女たちに必要とされるのだろうか。不要だと断じられたら、自分はどうなるのだろうか。

平和な世界で生きてきた自分が、先ほどのモンスターと直接戦うなんてできる気が全くしない。どうしようもなく不安が湧いてくる。

とりあえず今は、失望されないように振る舞うしかない。

​「ミリアは敵のステータスが見れたけど、ツバキも見れるの?」

​「いえ、私はできません。申し訳ありません」

​ツバキが申し訳なさそうな顔になる。

​「いや!謝ることじゃないよ!ツバキは敵を察知してくれたし!守ってくれたし!ステータスが見れないくらい大したことじゃないよ!」

​慌ててフォローすると、今度はミリアがいじけ出した。

​「えー、ひどい!まるで私がステータス見ることしか能がないみたいじゃないですか!」

​ミリアが口を尖らせる。

​「倉庫の管理もしてますからね!」

​倉庫が使えるのか!さっきの要領で「倉庫」と念じてみると、目の前に半透明な倉庫のウィンドウが現れた。

​「おぉ!」

​思わず声が漏れた。すると、リリィが、僕に聞いてきた。

​「突然どうしたんだ?」

​僕は目の前の倉庫ウィンドウを指差す。

​「リリィはこれが見える?」

​「何も見えないけど、何があるのか?」

​他の人には見えないのかな?それとも、倉庫管理権限がないから見えないだけなのか?

​「ミリアはこの倉庫ウインドウ見える?」

​「いえ、私にも見えないですね」

​どうやら、他人には見えないらしい。僕だけの能力ということだろうか。

​「なるほど、分かった。ありがとう」

​気を取り直して、倉庫のアイテムを確認する。ほとんどゲーム内と同じだが、一つ気になるアイテムが入っていた。パンだ。

​このアイテムは、キャラたちを戦闘や探索に派遣したときに消費されるもので、時間経過で回復するアイテムだ。パン切れによってゲームを進められなくなり、実質的な強制休息に歯がゆい思いをしたことは何度もあった。また、時間回復という性質上、ゲーム時代は普通のアイテムとは完全に別物だった。だが、今はこれが普通のアイテムと同じ枠に入っている。

​試しにパンを選択し、人数分取り出した。

​「ちょっとご飯食べながら、一休みしようか」

​そう言って、パンを配って食べた。味は見た目通りの普通のコッペパンだった。

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