あの時話してくれた転校生がいなかったら、僕の人生は一生モノクロの世界になっていただろう。

「ねえ、知ってる？」それが、あの子の口癖だった。「何を？」と皆が返す。そして、雑学を披露する。この流れが、あの子にとっての当たり前なのかもしれない。……でも、人によって当たり前は違う。例えば、朝に必ずパンを食べるという当たり前。朝に必ずご飯を食べるという当たり前。人はそれぞれ考えていることがあるのに、言わない人もあるし、逆に言い切る人もいる。僕は前者だけど、あの子に言いたい言葉ははっきりと持っていた。あの言葉、言いたかったな——。