第5話 入浴
買い物を終えて家に戻ると先生はまだピアノの部屋で楽譜を書いていた。
「ただいま。先生、そろそろお食事いかがですか?」
「詩さん」
「はい」
「追加の五線譜用紙が欲しいのですが」
「ああ、印刷しますね。ちょっとお待ちください」
さっき駅ビルで買った五線ノートはもう使い切ったのか……。早い……。
パソコンを起動しながら夕食に、と買ってきたものを片付ける。すごく不思議な気分。私、今、自宅にシューベルトと一緒にいるのかもしれない。なんて、誰も信じないよね。大体、時空を無視してどうして先生がここにいるのか。本人も分からないと言うけれど……。
でも待って…もしかして私、最大に危険なことをしている? この人がシューベルトではないのだとしたら。ただの変なおじさんだったら?
いやいや、もしシューベルトだったとしても…実際のシューベルトがいい人かどうかなんて誰も保証していないのでは。
それより、逆にこの人がシューベルトではなかったとして、ただの記憶喪失のおじさんだったとして……。だけど何にせよこの人は人間的に悪いことができるタイプではないのでは?
私には人を見る目があるのかどうか……。こんなこと…判断のしようなんかない……。でも…先生は……根拠はないけれど、なぜか大丈夫な気がする。
私の根拠のない勘によると、この人、平気だよ。
五線譜用紙を印刷するためにパソコンを見ていたら先生もモニターをじっと見つめている。
「先生、どうされました?」
「これ、ものすごく明るいですね」
「ああ、モニターですからね」
「この光はどこから来ているのですか?」
「ええと、電気ですから……」
「電気……」
「はい」
「詩さん、さっきお湯も電気が作っている、と言いましたよね?」
「あ、はい。言いました」
「明かりもお湯も空気も電気が作っているというのは一体……」
「確かに、言われてみると不思議かもしれません。そうですよね……」
「興味があります。その、電気とやらの元の形を見せていただけないでしょうか」
「電気を見せる?」
「電気とは、一体何なのでしょうか」
「いや、それは……。これも、あれも電気ですよね……。そこのコンセントから流れてくる…何と言うのでしょう…水みたいなもの、ですかね」
「水、ですか?」
「いつも流れていて……。言われてみればたしかに…私も不思議だと思います。私も実は…よく分かりません……」
「本当に不思議です。光にもなり風にもなる。水を温め五線を描く……」
そう呟いてからじっと黙って考え込むシューベルト。言われてみれば確かに。電気なんか当たり前に使っていたけれど、不思議だよね……。と言うか、電気がない世界からやって来た先生って、どんな暮らしをしていたのか…私には想像もできない……。そんな世界の人から見たら、電気は相当不思議なものに違いない。
「あ、そういえば……。先生、何かお飲みになりますか?」
「あ、いや。しかし、水を汲みに行きますか? それならばぼくも手伝いましょう」
「水を汲みに?」
「水を汲むのならぼくがしましょうか?」
「水は蛇口から出ますし、飲み物なら冷蔵庫に……」
「水は蛇口から? もう汲んである、ということですね?」
まあ、そういうことで…もう…いいか……。お互い違う世界で生きているのだし…いちいち説明するのも、ね……。
「ビールも買ってきました。ワインもあります。お酒なんか、召し上がりますか?」
「ああ、水よりもビールがいいでしょうね。水なんか飲むと体調を崩すかもしれませんから」
「え?」
「水に当たって重大な事態になっては大変ですから」
「ええと……」
「ビールがいいです。もちろんワインでも構いません」
「では……。支度をするのでお待ち下さい」
「詩さん、その前に五線譜用紙を……」
「あ、そうでした。すみません。今、印刷しますね。ここを見ていてください」
何度かクリックを繰り返すとプリンターから用紙が吐き出される。
「おお! これはなんと! すごい。詩さん、家業は印刷屋さんなのですか?」
「まさか。こんなのどこの家にもありますよ」
「え? この機械がどこの家にもある?」
「あるんじゃないですか、ね……」
「すると、この機械で楽譜も印刷できますか?」
「できますけど正規のものはお金を払わないとできませんね」
「これは…こんな機械をお持ちだなんて…大変な驚きです。素晴らしいですね。あなたは一体……」
それはこちらの台詞なのですが。あなたこそ一体。
「詩さんは実業家のお嬢様でいらっしゃるのですね?」
「いえ、私なんか…貧困家庭でしたよ」
「そんなことはないはずです。夜もこんなに明るいお屋敷をお持ちですし、印刷機械が自由に使える。ピアノもお持ちです。それに詩さん、あなたは気高い品をお持ちです」
「あの……。答えに困るほどのお言葉ですね……。私は全然そんなものではありません……。先生、褒め過ぎです……」
ご冗談がお上手で、と思ったけれど、意外と本人は大真面目に言っているようだったので大袈裟に笑うのはやめておこう、と品良く微笑みを浮かべるにとどめておく。とは言っても、私はそもそもそんな気高い品、なんてものは持っていないので…私なんか……。もう、先生のこのピュアな瞳……。私、どうすれば?
「これ、持っていってもいいですか?」
「あ、はい。もちろんどうぞ」
プリンタが五線を吐き出し終わって静かになったところでまた、束にした五線譜を持ってピアノの部屋にこもる先生。また作曲か……。ビールはいつ飲みますか? 入浴されました? お風呂を見ると使った形跡がない。お風呂を済ませて食事にしませんか。
結局先生はそこから二時間くらいピアノに向かって集中していた。
のぞくと暗い部屋でピアノに向かっている。薄暗い中に浮かぶあの姿。あ、これこそ。まさにシューベルトだ。あんな感じの絵をどこかで見たことがある気がする。アロハシャツを着ていても、あの、頭のあたりから醸し出している雰囲気が教科書で見たのと同じ。まさにシューベルト。やっぱり…本物?
「先生、お仕事中に失礼します。お風呂は?」
「お風呂って?」
「さっぱりなさいませんか?」
「なぜ?」
「え…なぜ? なぜって…その、今日も暑かったし……」
それに先生、ちょっと変な臭いがするから……。とは言えない。けど、ちょっと変な臭いがする……。汗とも違う……。新しい服を着ているはずなのに先生の近くにいるとなぜか、頭皮の脂とろうそくを合わせたような妙な香りを感じてしまう。体臭と言うよりも、何か古ぼけたような埃の香り……。
「お風呂の使い方を説明しますから、ぜひ」
「何か特別なことでもあるのでしょうか?」
「え? 特別なこと?」
「水浴びをしろだなんて、何か特別なことがあるからですか?」
「いえ……。その、何ですかね……。ここでは毎日お湯を浴びることで身を清めると言うか……。心も体もきれいに…なんて……。いえ、ただ…気持ち良いかな、なんて……」
先生はものすごく怪訝な顔をしている。お風呂、嫌いなのかな……。大人なのに水が怖いとか?
「あの、何も怖くないし冷たくもありません。温度はお好きなように調整していただいて構いませんので。あの、こちら、一緒に来てもらえますか?」
お風呂嫌いだなんて子どもみたい。渋々付いてくる大作曲家先生。
「こちらで服を脱いで裸になっていただいて…って、そんなことは分かりますかね……。先生、私はどこをどう説明したらいいですかね」
「いや、その…全部お願いします……」
「そしたら、あとで洗濯しますから、着ていた服はこのかごに入れておいてくださいね。それで、浴槽にお湯が張ってあります。あ、そうだ。入浴剤、入れましょうか。これ、いい香りがするんですよ」
ミルクのような香りがする入浴剤をお湯に溶かす。やわらかくて優しい、いい香りがするから私は毎晩疲れを癒すためにこれを浴槽に入れる。私はこういうのが好きで。でも男性はこういうの、別に喜んだりはしない、かな……。でも、何も入れないよりいい気分かもしれないし。
発泡しながら浴槽に沈んでいく丸くて大きなタブレット状の入浴剤。しゅんしゅん静かな音を立てながらお湯の中でかすかに踊っている。
「どうですか? この香り、私のお気に入りなんです」
「詩さん……。これは……」
「あまりこういうものはお好きではなかったですか?」
「いえ…これは……。この香り……。これはまるで…幸せの香りですね。どうやってこれを作ったのですか? この粉は一体何ですか?」
いい香りですよね。私これ、大好きなんです。と言おうと思ったけれど、先生は私が想像するよりももっとずっと、かなり大きく感動している様子。湯船から立ち上るミルクの甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで目を閉じうっとりしている。そんな……。この程度で…そこまで喜んだり感動するなんて。
「あの、先生……」
「詩さん……。天国はもしかしたら、こういうところかもしれませんね」
「え…天国ですか?」
「天上の世界に女神がいて、天使が舞うまばゆい世界があるのだとしたら、そこはきっとこんな空気なのだと思います」
「先生……。それは…とてもきれいな世界ですね……」
大作曲家先生は私を見て微笑む。たかが入浴剤でそこまでの想像ができるなんて。そんなの大袈裟すぎますよ、と笑うこともできず、私にとっては日常的なことなのにものすごく高尚なことのように表現するから…私はどう反応したらいいのか分からない……。
でも、そんなことが言えるなんて、素敵な方だな、と私はそのことに感動した。私もこの香りは好きだったけど、それをこんなに喜ぶことができて天使の世界だなんて。そんなふうに思える心を持っている成人男性。感性? 繊細さ? だからなのかな……。そういう感性をお持ちだからこそシューベルト、なのかな……。だからこそ作曲ができる?
まだ甘い香りの湯気に目を閉じて喜んでいる先生のその姿を、なぜかずっと見ていたいかも、なんて思ったり。
じっと目を閉じて首を傾げる様子。先生の頭の中にはもしかしたら音楽が鳴っているのかもしれない。眼鏡が湯気で曇っている。
この人はとても純粋な人。胸いっぱいに浴槽から立ち上る湯気を吸い込もうとするその仕草がかわいらしい、なんて思ったらだめかな……。先生は多分私よりも年上…?
このまま時を止めてあげたい。けれど……
「あの、先生……」
「はい」
「すみません。ええと、とりあえず一通りご説明しておきますね。これがシャンプーです。髪を洗うものですね。こちらはボディーソープ。これで体を洗ってください」
「……」
「やってみて分からなかったらお声掛けくださいね。あ、お風呂が終わったらパジャマをどうぞ。これ、さっき買ってきました。多分サイズも大丈夫なのではないかと。入浴が済んだらこのタオルで髪や体を拭いて、それからこれを着るんです」
「分かりました。ありがとう。あのね、詩さん」
「はい」
「ぼくはどうして水浴びをしないといけないのですか?」
「嫌ですか?」
「いえ……。こんなの……。こんなことをするのは皇帝くらいなのでは、なんて思って」
「皇帝……」
「一体どんなハーブを使っているのですか? この香りはどうしたら作れるのだろう……」
「あの、先生。もしかして水が怖い、とか、そういうことは…?」
「いえ、大丈夫です。ただ、水をこんなに使うなんて信じられないのです。しかも温めてあるのですよね? ぼくは庶民ですよ」
「私も庶民ですよ。でも…そしたら明日はシャワーにしましょうか」
「シャワー?」
「お湯を張らずに……ええと、こうです。これを見てください。ここを回すとお湯が出ます」
「おお! なるほど。噴水ですね。ここにこういう物があるなんて。これはすごい。とてもきれいですね」
「きれい? ええ、まあ…そうですかね……。これでお湯を浴びて体をきれいにできますから」
「詩さんは年に何回くらいこんな大層な入浴をされるのですか? 私が客人だから?」
「いえ、先生がいらっしゃらなくてもこんなものは毎日……」
「ええ!? 毎日これだけのお湯を用意できるなんて、あなたはどれほどのお方なのか……」
「いえ、私は…貧しい庶民ですよ。日本では庶民でも毎日入浴したりしていて……。とにかく先生、さあどうぞ。私は向こうでお食事の支度をしていますから、ゆっくり湯船に浸かってくつろいでください」
「詩さん」
「はい」
「あなたは女中ではないのです。そしてぼくはとても迷惑な客人であり……」
「先生、そんなことはありません。さあ、ぜひご入浴をお楽しみください」
私はその場を立ち去り食卓の準備をしていたのだけれど、浴室から先生の鼻歌が聞こえてきた、と思った次の瞬間には先生が服を着たまま脱衣所からこちらやって来た。
「どうされました? 何かご不明なことでも? ご入浴、まだですよね?」
「まだです。また…ちょっと曲の動機だけ…記録してきます」
「ああ…曲が浮かんだのですか?」
「はい。あの空気の中で生まれた動機をどうにか留めておきたくて。書いたらすぐに身を清めますから」
「ええ。ごゆっくりどうぞ……」
今回の作曲は二十分ほどで終わったようで、ピアノを離れたと思ったら一人で浴室へ入っていったご様子。
何だか心配で、浴室の使い方はちゃんとご理解いただけたのだろうか、この世界のご入浴は順調にできているのだろうか、とまるで子どもや老人を心配するような気持ちになってしまうのだけれど、さすがに浴室にまでのぞきに行くわけにはいかないのでただひたすら黙って待機。
「詩さん」
「あ、先生。ご入浴はいかがでしたか?」
「入浴は大変いいものですね。あの湯の香りは極上です。本当に天国にいるような、夢の中にいるような心地でした」
「ご満足いただけたのなら私もうれしいです」
「あれは本当にいい香りでした。ぼくは大変幸せです」
先生から立ち上る湯気も甘いミルクの香り。やわらかくて優しくて、それに喜ぶ先生がかわいらしい。子ども達を見ていて思うような、純粋なものに抱く愛おしい気持ち。
「先生……」
「はい?」
「ちょっと失礼します。髪を洗うのは難しかったですか?」
「どうでしょうか。おかしなところがありますか?」
「ええと…髪にまだシャンプーが残っていますね。それに水滴が滴っていますし……」
「ぼくの具合はよくありませんか?」
「ええと…その…ちょっと……。ほんの少しだけ…手直しさせていただいてもいいですか?」
「手直しですか?」
「一緒にこちらに来ていただけますか?」
先生を洗面所にお連れして洗面台に向かって屈んでもらう。洗面台のシャワーからお湯を出して先生の頭にそっと注いでシャンプーを落とそうとするとどこもかしこも泡立って…全然濯げていない。
「先生、泡だらけですね」
「そうですか?」
「ちょっとそのまま、じっとして下を向いたままでいてくださいね」
「はい」
大人の頭を洗うなんてことが普段はない上に、この人は男性。
先生はこの世界のことを何も知らないのだとしたら私は大人に対する接し方をするべきなのか、それとも何も知らない子どもに対するような接し方をするべきなのか、そこも何だかよくわからなくなってくる。
少しお湯をかけて擦るともこもこ泡が立つ。シャンプーを全然泡立てることもなくただ擦り付けて大して濯がなかったんだ……。
それなら、と思って頭皮をきれいにしようかと思ったら泡立ったはずのシャンプーは先生の頭皮の皮脂に吸収されて消えてしまった。しばらく洗っていない髪をきれいにするのは大変なのかもしれない。
いつまでも洗面台に屈んでいてもらうのも体勢的につらいだろうし、手早くシャンプーを濯いで、十分かな、というところで終わりにする。
仕事柄、子どもが相手だったら、がんばったね、えらかったね、と言って抱きしめたくなるところなのだけど、一瞬そんなことが思い浮かんでしまったのだけれど、さすがにそれは思いとどまって自制。さっき出会ったばかりの人にそんなことをしたらそれはどう考えたっておかしい。それなのに、ほんのちょっとだけ、そういうことをしてあげたくなってしまったのはなぜだろう……。
「先生、完了です。ご協力ありがとうございます。ちょっとお待ちくださいね。今、水気を拭き取りますから」
先生の頭にタオルを当てて優しく擦る。水分を拭き取って素手でばさばさかき上げてみると、何ともきれいな髪。うねりのある茶色く細い髪。日本人の髪質と違って繊細と言うか、お人形の髪みたいでかわいい。何だか髪も先生の仕草も愛おしい。地肌付近には洗いきれなかったフケがぽろぽろいくつも浮いていて……。でもこれはもう明日以降に少しずつきれいにしていけばいいよね……。だって、先生はこの世界にさっき来たばかりなのだし……。
「先生、髪の色、とても美しいんですね」
「そうですか?」
「はい。とてもすてきです」
「それを褒められたことはあまりなかったですね。ぼくのいた場所では皆こういうものでしたから。詩さんの髪もとても美しいです。ぼくはあなたのような髪色を見たことがなかったです」
「そうですか? それよりも先生の髪質、私から見るとうらやましいです」
「そうですか?」
「はい。やわらかくて」
「これは、ぼくの兄も母もこんな感じなんですよ」
「そうなんですか。そしたら遺伝なんですね」
「詩さんのお母様の髪色は黒だったんですか?」
「黒でしたね。私と同じです」
「そうですか」
髪を乾かしながらそんな話をしていると私はこの人に今日初めて会ったはずなのに、もっとずっと前から知り合いだったような、なぜだか懐かしいような気分になる。時代も場所も違うところから来た人なのに。どうしてかな……。
「先生、向こうのソファにお掛けいただいても良いですか? ドライヤーで髪を乾かしますから」
「ドライヤー?」
「温風を当てて髪の水分を乾かします」
「何だかよくわかりませんが、お願いします」
リビングのソファに座ってもらってドライヤーのコードを近くのコンセントにつなぐ。
「先生、今から熱い風を当てて髪を乾かしますからね」
「きっとそれも、電気が、と言うのですよね?」
「その通りです。電気の恵みで御髪を乾燥させていただきますね」
そしてドライヤーのスイッチを入れて温風を当てようとすると先生は最初驚いて、この威嚇するような音が怖いし熱いのも怖い、と一瞬怯えたので普段仕事で世話をしている子ども達の姿が重なってしまう。先生、かわいい。
大丈夫、何も心配しないで、となだめて最弱の風量でブラシも使って先生の髪を乾かしていく。
じっとしていてくれたけれど、どうもドライヤーの音がかなり苦手なご様子。
「これで乾いたと思います。お風呂はこれで完了ですね。ご気分はいかがですか?」
「とても不思議な気分です」
「不思議な気分、ですか?」
「入浴する、というのはなかなか大変なものですね」
「そうでしょうか。慣れればそこまでではないと思うのですが」
「ぼくは髪を洗ったのなんて何ヶ月前だったのか、もう覚えていません」
「え、そんなに洗わないんですか?」
「そんなものです」
「それは…大変ですね……」
「大変? 詩さんは?」
「私は…基本的には毎日、とか、ですかね……」
「毎日とは……。それは本当に大変ですね」
「いえ、逆にあまり洗えないのも大変ですよね……」
「ぼくらの世界から考えるとそんなに水を使うことができるなんて。ここは本当に豊かなところなんですね」
「このあたりは湿度も高いので髪も体もしばらく洗わないでいるとべたべたするんですよ」
「なるほど」
「ええと、私もそんなわけなので、食事の前に入浴してきても良いでしょうか」
「もちろん。ここはあなたのお屋敷ですから」
「お屋敷……」
「いいお住まいで素晴らしいですね」
「そんなふうに言うほどの家では……」
「どうぞ。ぼくはピアノを弾いていても良いでしょうか」
「もちろん。ご自由に、お好きなようにお過ごしください」
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