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 コリクソン特等と共に支部へとやってくると、偶々敷地の入り口付近に居たミーティアさんに出迎えられた。


(偶々居た感じを装ってるんだろうな……正直心強い)


 大事な時だけ頭が切れるアイザックの事だ。こちらへ連絡を寄こしたタイミングの前後で支部へも連絡を入れていたのだろう。

 連絡を入れた上であえて動かさず、この状況を想定した。

 それがミーティアからの視線で伝わる。


「ウチの大将から話は聞いてる。急用は終わったのか? マコっちゃんよぉ」


「終わった。終わった上で偶々ロイ君の家の近くだった訳でな、リタ君のお見舞いついでに顔を出した後、此処まで案内して貰った訳だ……というかロイ君。もしかしてこのあだ名そこら中に広まっている感じなのか?」


「ええ、まあそんな感じです」


 もっともほぼ初対面で面と向かって呼びそうなのはミーティア位なのだが。


「……凄いな。来た事も無い場所に遠出してきたのに、なんだか懐かしい気分だ」


「どうやらお前も相当苦労したみてえだな、マコっちゃん」


「……目上で階級も上で、更に言えば一応客人にお前ってのは止めた方が良いんじゃないかっていうのは一旦置いておいて、お願いだからマコっちゃん呼びは止めてくれないか」


「そうだな、目上で階級も上で客人な訳だし、マコっさん辺りにしておくか?」


「……マコっちゃんよりはマコっさんの方が敬われてはいるのか? どっちだこれ?」


 真剣にそう悩む素振りを見せるコリクソン特等からは、先程までの重い空気は感じられない。

 あくまで自分の前以外では平静を装うつもりなのかもしれない。

 自分の前でも装おうとはしていたのかもしれないが。


「それでミーティア君」


「なんであーしの名前知ってんだ?」


「アイザックさんが頭を張ってる62支部の創設メンバーだからな。それに少し有名人だ」


「あーしがか?」


「当時訓練校にとんでもないチンピラが居るって噂が流れていてね。その子が此処の創設メンバーだと」


「人違いじゃねえのか。なあロイ」


「そうですよ。この人がチンピラなの目付きと機嫌悪い時とアイザックさんにキレてる時位ですよ」


「お前も一発ぶん殴ってやろうか」


 そうキレ気味に言うミーティアだが、明らかに緊張と警戒心が走っているのが分かる。

 普段この支部に出入りしていない人間には分からない程度の小さな変化ではあるが。

 ミーティアだけではない。

 視界に入った何人かも、普段から顔を合わせている人間なら分かる程度に警戒心を募らせている。

 ……こんな馬鹿みたいな会話をしているのに、全員が平常心で此処に立っていない。

 そんな状況でコリクソン特等は、会話の軌道を戻す。


「それで改めてだけどミーティア君。応接室でもどこでも良い。少しの間だけ借りる事はできないか? ……ロイ君と話したい事がある」


 少しだけ、ここに来てから抑え込んでいた重さが漏れ出したのを感じた。

 それを感じ取ったように僅かに警戒心を強めたミーティアは言う。


「此処じゃ駄目なのか? つーか此処に来るまでの間に話せば良かっただろ。どうせガラガラだっただろバスの中も」


「一理ある。だが実際話していないのが今で、どこか一室を借りるのが適切だと思っているのも事実だ。どうだろうか? 本当にそう時間は掛からない……頼むよ」


「分かった。好きな所使え。ちなみにあーし含めて何人かがそこに同席ってのは──」


「悪いがサシで話させてくれ」


「……ロイ、お前が案内してやれ」


 そう言ってこちらに向けられる視線は、不都合な事が有ったらすぐに呼べと言わんばかりで。

 多分部屋の外でスタンバってくれるのだろう事が容易に想像できる。

 ……本気で心強い。いざとなったら借りられるだけ力を借りる事にしようとは思う。

 自分に事をうまく勧められる能力が無いのは理解している訳だから

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