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「すみません、アイザックさん。ちゃっかり乗せて貰っちゃって」


「目的地が同じだからね。席も空いていたから乗せない理由が無い」


 あの後自宅を後にして支部へ向かおうとしていた私達は、道中偶然にも支部へ戻る途中だったアイザックさん達に出くわした。

 そしてそのまま車両に乗せて貰って支部に移動中って感じになる。

 なる訳だけど。


「……これ空いてるって言います?」


「詰めたら乗れるという事は即ち空いているという事さ」


 今回アイザックさんとミーティアさんを含め八人が現場に向かった訳で、運転席と助手席に座る先輩方を除けば六人と装備などで定員一杯。

 そこに私と兄ちゃんが乗り込んだ訳だから結構狭い。


「まあ窮屈なのは良い事っすよ。二人乗っけて余裕が有ったら、私らの中で誰かが欠けたって事になるっすからね」


「ですね。まあ僕らは事後処理しかしてないんで基本欠ける事は無い筈なんですが……」


「ちょっと約一名危なかったっすからねぇ」


「ええ、約一名渦中に突っ込んでいきましたからね」


 先輩方が苦笑いを浮かべながらアイザックさんに視線を向けながらそう言う。


「約一名……まさかとは思うけど僕の事かい?」


「なんでまさかと思えるんだよお前は……」


「思えるというか思いたいというか……まったく、偶に真面目に働くとこうなるんだから参るね」


 言葉とは裏腹に全く参っていなさそうなアイザックさんに、兄ちゃんが問いかける。


「そ、そうだ。あれから一体どうなったんですか!? 話聞く感じというか、此処にいらっしゃるのでとりあえず大丈夫だったんだと思いますけど」


「キミの言う通りとりあえずは無事だね。今後の事となると不透明だが……まあとにかく、細かい話はまた後でだ。現場に居たキミは気になって仕方が無いとは思うけど、何よりキミとは他に交わすべき言葉がある」


 そしてアイザックさんは一拍空けてから兄ちゃんに言う。


「ようこそ、第62支部へ。支部長のアイザック・ナルディだ。よろしく頼むよ」


 自己紹介だ。

 何せ兄ちゃんとアイザックさんはさっき同じ現場に居たってだけで、碌にコミュニケーションを取っていなかった筈だからね。

 色々と踏み込んだ話をする前にちゃんとやるべき事をやっておくのは大事だと思う。


「あ、そういえばすみません自己紹介が遅れました! ロイ・ヴェルメリア。三等滅魂師です! これからお世話になります!」


「お、良いね。しっかりとした良い挨拶だ。ちゃんと新人らしいというか部下らしいというか……キミも最初はそうだったんだけどなぁ」


 小さく溜め息を吐きながらこっちを見てくるアイザックさん。申し訳ないけど自己責任だと思うよ。


「それに関しちゃ自己責任だろ」


 ミーティアさんもそう思うよね!


「キミに関しては最初からそんな感じだったよなぁ。そこに僕の過失は無いだろう……」


 それはそれでどうなってんだよって思うけど。

 そしてアイザックさんは軽く咳払いをしてから改めて言う。


「とにかく詳しい話は支部についてから段取りを組んでやろう。丁度これから簡易的な入隊式を兼ねたミーティングだ」

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