慣れにビジター。【詩】

ドラもり

春。

 立春を過ぎた頃、あまりにも季節外れな冬の呼び声が、放課後のグラウンドで喝采をもたらした。

 ある人は首都のタワーを見て心の底から高揚し、またある人は見慣れない冬の風物詩に笑みを浮かべる。どちらも視認することは容易であるが、享受できる幸福感は一塩である。これには環境的要因が大きい。勿論その対象と密接に関わる生活環境であれば、人間の慣れという性質が稀有だと思う初心を忘却させる。この慣れというものは人生を円滑に歩ませる特性と人生の面白味を奪い酷い場合には苦痛に転化させる特性がある。慣れは人間としてあるべき所作を日常的に維持する最低限の能力である。であるからして、これは社会生活での成功の道筋における起点なのである。

 一方慣れは日々の生活が怠惰になり、連続する作業を飽きらしく思う。勿論歯を磨く、風呂に入るなどの行動は不利益が大きいと認識する個人の意識がこの慣れを上回るから継続がかろうじて可能となっている。しかしながら、給与や生活環境が10年、20年と変貌を遂げず職場でも特に活力となる何らかの目標を目指せないのであれば、いずれ生が苦痛となって死することであろう。人間は日々の生活においてある程度のバランスを保つことが求められる。知らない地へ向かう、誰とでも他愛のない話をする。総じて生活環境を変化させることが必要となってくる。そんな思考するだけ脳内の糖分を無駄にするようなふみを思い浮かべながら日々を過ごす、私は慣れと適切に関わりたい。そう願った。

 雪は水に変わっていた。

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