ブレスト~初稿まで

『廻り髪結い』で行くと決まりましたが、まだまだ詳細は何も固まっていない段階。本庄さんからアイデアが届きます。



【本庄】

先日の櫛のストーリーについて、いくつか当方側のアイデア等をまとめていこうと思います。ブレインストーミング的なイメージで、これを採用しなさいというのではなく、新たなアイデアのきっかけになるかもしれないしならないかもしれない、程度に考えていただけますと幸いです。


・主人公のキャラ

 →非常にいいと思います! 顔が良いのは絵のない小説では長所として表現しにくい部分なので、もう一つ人間的魅力もあると良いかもしれません。

例:実はずる賢い or 何か得意分野がある等

・櫛の設定

 →すでに完成された探偵役なので、ミステリアスな探偵役に向いていると思います。

以下は一話で出す必要はありませんが、なぜ謎を解きたがるのか等は裏設定であってもいいかもしれません。あとは、どういう謎解きが得意で、逆に何か苦手はないのか。

・女髪結いの設定の深掘り

 →女髪結いが捨てキャラ(容疑者なので捨てとはいいませんが、半退場状態)になるのはもったいないので、何か使いたい。できればどんでん返し方面だとかなりスッキリおさまる。(引きにする等。人は一度退場したと思い込んだキャラへの警戒心が弱くなるため)

長編にするのでしたら、詳細を仮決めしておいて損はないでしょう。

例:師匠は櫛に情報を与えるのが上手い。櫛が必要とする情報は、誰もが簡単に

・サブキャラでイケメンを出す

 →時代設定的に女性票が集まりやすい、その上で人気キャラを作りたいという下心です。ただ、舞台的に男の出し方が難しいので、ピンと来る設定が降ってこない限りは不要だと思います。茶々入れ名前付きモブ程度になるでしょう。マスコット的な。

・一話での名刺的謎解き

 →大目標(あるいは小目標)は師匠の救出として、一話の中で櫛の実力を明らかにする小さな事件があると、より明確にまとまりそうです。字数的に厳しいかもしれないので、優先順位はそんなに高くないかと……。


 時代物はミステリ界隈の人がそんなに来ないので、ミステリ部分以外も作りこまないといけないのが難点です。字数との戦いになると思います……。字数削るアイデアとかもありますので、共に頑張りましょう笑

2025年6月22日 午後10:01


 サブキャラでイケメンを出す、というのはまったく頭になかったので、これは膝を打ちました。票が集まる戦略がぽんぽんと出てきます。これが完全優勝者……

 ブレストはさらに続きます。



【本庄】

ちょっとまとめます。

当方は歴史ものが得意かのように思われがちですが、実は歴史が苦手で、歴史ものを書くたびに付け焼刃で書いているだけなので、江戸は全然詳しくありません。気になる点を書いてはいますが、とんちんかんな指摘かもしれません。


①たき、りんの住んでいる長屋の場所を吉原の中にするか?

 ・吉原の外在住だと、遊郭の外から中に日々たきが入っていくのは妙な話である。見習いとはいえ……

 ・吉原はビジネス街なので、吉原の中に普通の長屋はメジャーではない。妓楼所属でないスタッフは外部から入ってきます。

 ・妓楼付属の長屋という設定もアリ(妓楼付属だと、ストーリーが変わってくる可能性もあるので慎重になりたい)

 →何とも言えないのでいったん保留とします。


②たきの弟妹について

 ・吉原の中在住なら「弟」は売られてこない

 ・吉原に売られてくる女の子は、ほとんど禿か雑用係(いずれにせよ妓楼が買う商品なので、妓楼の所属)

 ・年齢的には、たきは禿として売られてきた説が濃厚

 ・あるいは、妓楼で生まれた遊女の子供を(血の繋がりがあるかは微妙として)、妓楼の長屋で、たきがまとめて育てているというアイデアはアリかも

 ・いずれもどこかの大妓楼所属になる可能性あり


③りんについて

 ・遊郭の女髪結いは、フリーランスであり、基本的に吉原の外に住んでいる(廻り髪結い)。

 ・フリー髪結いであれば、吉原の噂に詳しいのも納得。

 ・たきもろとも遊郭の外に住まわせて、毎日一緒に吉原に入る感じにするか?

 ・あるいは、どこかの妓楼専属の女髪結いでも大丈夫そう(いかにも創作らしい設定だが、ナシではなさそう)

 ・りんはどこで髪結いの技術を得たのか。自分で結えないからプロに頼んでいるわけで、それなりの訓練が必要。櫛も師匠から貰っているので、どこかで習ったはず。

 ・案として、かつて髪結いに奉公していたという設定はどうか。床屋が火事になった等の理由で流れ着いた的な……。

 ・そうなると、りんが吉原に入った理由が必要となる。そもそも姉の身売りで実家には金があるはず。親が姉の身売りの金を使ってしまったのか、身売り金では足りなかったのか。

 ・かなり事情が変わってしまうが「年齢的な問題で、姉は吉原に(10歳くらい?)、妹は髪結いに奉公に出た(5歳くらい?)。しかし姉が死んだという一報が入り、そこに何かしらの疑問を見出し、自ら吉原に足を踏み入れた」という案はどうか。

 ・身請け話があるとなると、完全にどこかの妓楼所属になりそう。

 ・筋を通すというのが、当時の吉原でどれほどメジャーな価値観か分からないが(侍っぽい価値観?)、身請け話を断るエピソードにも一応つながる


④岡っ引き

 ・事件の際に吉原に出入りする設定。設定上問題はないと考えるが、後々調べる上で矛盾が起きた時の為に、念のため複数の設定候補を用意。

 ・案A:妓楼の用心棒。妓楼所属であれば上手く生きそうな案

 ・案B:妓楼の料理屋。妓楼に出前を出している料理屋の手代で、妓楼とは無関係

 ・案C:引手茶屋の若い衆。中流の遊女と客の仲介人。女衒寄りになるので、印象が悪いか?

 ・案D:占い師(易者)。ちょっと軽い男になりそう。自由が利く設定だが、地に足がつかない設定でもある。


⑤櫛

 特になし。今の設定で。


⑥たきとりんの関係性

 現在、たきが非常に〝いい子〟なので物語が動かしにくい可能性があります。好感度は高いと思いますが、共感というか、主人公なので読者にモテないといけません。いいキャラは創作者にとって作りやすいので、巷に溢れているものです。

 そうなると、人間味のあるりんに人気が集中する可能性があり、そうなると物語序盤でりんが離脱(?)することをにおわせるため、「好きなキャラがしばらく見られないのなら……」と読者さんが無自覚に興味を失う可能性があります。それは困る。

 これはアイデアの一つなので、採用しろという圧は全くありませんが、阿下さんはギャグマンガ日和をご存じですか? 聖徳太子と小野妹子をご存じでしょうか? もしご存じでないなら違法視聴してください。

 あの聖徳太子と小野妹子みたいな関係性にするのはどうでしょうか。立場が上で尊大で自由人で変人、完全なるボケ役と、部下で困らされる立場ながら、鋭いツッコミ役。一方で突っ込まされるばかりではなく、悪ノリしてツッコミ不在になることもしばしば。

 これを真似する必要はありませんが、人間関係については阿下さんの既知のバディで魅力的なバディ・使えそうなバディの細かい特徴・魅力を持って来た方がしっくりまとまるのではないかと思います。

 どうしても困ったら、pixivで知っている漫画の人気BLカップリングを調べて下さい。私もBLは実はほとんどたしなまないのですが、知っているキャラの組み合わせを見て、なぜそれが人気なのか、納得がいくものといかないものがあると思います。そのうちの納得がいくものの人間関係のエッセンスを抽出して持ってきたらいい感じです。

 バディは関係性がないとバディとして成り立ちませんので、個別のキャラを先に決めるのではなく、バディを先に組ませて関係性(互いへの感情、扱い等)を決め、そこから個別キャラの詳細を決める方が、上手くまとまることが経験として多いです。


 しかし問題はまだあり、途中でたき&りんバディから、たき&くしバディになることには変わりありません。かといって、櫛のネタは絶対に必要なので、りんの離脱は欠かせない。その部分、もう少し詰める必要があります。


 上記はいずれも、「こうするべきである」というのではないですが、参考になりましたら幸いです。全体的に細かい部分をざっくり決めて、本文を書いちゃいましょう! 既に決まっている部分があれば、ワンシーンでも見たいです。

2025年6月27日 午後2:51


 詳しくない人がどうしてここまで意見を出すことができようか。

 さらにいうならば、自身の原稿でもないのにこれだけの熱量で意見を返してくださるなんて、いい人すぎませんか? 思わずこちらからの返信も長くなります。



【阿下】

①たき、りんの長屋について

二人は吉原の外にいる想定でした。今日見ていたサイトで、吉原は女性の出入りにめちゃくちゃ監視の目が厳しかった、とあったので、たきとりんが出入りするシーンがある時は要注意かな、と。


・吉原の外在住だと、遊郭の外から中に日々たきが入っていくのは妙な話である。


とあるのは、そういった理由からですか? 毎日りんの後に着いて吉原に出入りしていることに、自分は全然違和感を覚えなかったので、このご指摘は少し分からず。

意図を教えていただけると助かります。


②たきの弟妹について

①のとおり、吉原外の想定でした。なので、たきは禿ではなく、普通の町人の女の子。弟妹たちと貧乏暮らしをしている設定です。


③りんについて

吉原外にいるフリーランスの髪結いの想定です。姉の死に疑問を感じて、吉原専門の髪結いになったというのはよいですね。本編に書かずともりんの履歴書につけ加えたい内容です。

筋を通すという考え方は武士道に通じるようですが、町人であるりんが知っていてもおかしくはないと思います。女性にまで浸透しているかどうかが分からなかったのですが、浸透していなくても逆に、女だてらに筋の通し方を知っている、などと男の登場人物に言わせるのもありかもしれません。


④岡っ引きについて

妓楼の用心棒はありだな、と思いました。岡っ引きがどんなところに住んでいたのかいまいち分からず(同心の家に寄せてもらっていたのか、自分で長屋に住んでいたのか、など)、岡っ引きとしての稼ぎはほとんどないようなものという記録を見たので、貧乏長屋に住んでいてもおかしくはないかな、と思った次第。

妓楼の用心棒にするなら、住む場所は長屋から吉原内に変更ですね。同じ長屋に住んでいた方が、りんの寝起きの姿を見たりするなど事件が起こしやすいかな、と思いましたが。考えます。


⑤櫛について

ありがとうございます。口調はきついけどかっこいい、気っ風の良い江戸っ子おばあちゃんのイメージです。


⑥たきとりんの関係性について

これは完全に盲点でした。たきはとにかく平凡でりんに振り回されるイメージをしていましたが、なるほど確かに人間くさい方が人気が出るかもです。

ギャグマンガ日和はタイトルを知っているくらいなので、勉強してきます。

一つ懸念は、聖徳太子と小野妹子の関係性で「応援」はしたくなりますか?

貧乏で健気に頑張る女の子が、大好きな師匠がいなくなってそれでも櫛というバディを得て立ち上がる姿に応援したくなるのでは、という考えから立ち上げたプロットだったので、たきは普通のよい子であるほどよいのかな、と思ってました。

応援したくなるキャラというのは、これまで自分が書いたことのないキャラだったので、できれば挑戦してみたいところです。

なので、たきとりんのバディとしての関係性のモデルを見つけて、かつそこからたきを応援したくなるキャラにしたてあげる、ということをしてみます。

好きなのは島田荘司の御手洗潔と石岡、森博嗣の犀川先生と西之園萌絵とかですが、当てはめづらいな……

2025年6月27日 午後10:32



 すかさず返信がきます。



【本庄】

ここは完全にこちらの感覚で、実際の点とは違うかもしれませんが、祭りでは作者が不明なのでかなり明け透けな指摘をされます(正しい描写でも、非有識者が非有識者なりの感覚で、まるで正当かのように指摘してきます)。なので事前に、対策できないにしても、それなりに詰めておきたいという意図です。


・たきとりんの出入り

→この点については、吉原が女性の出入りに厳しいこともありますが「年端もいかない女児を連れて、吉原に日々入っているりんが、周囲にどう思われるか」という点です。「遊女にならないと決まっている女児が遊郭に出入りすることの是非(冷やかしに見える)」ともいえます。

現代の飛田新地的な遊郭要素を残す場所でも、女子供はかなり冷たく扱われる(連れてきた人に対しても)点から危惧しています。


これは歴史と整合性を取れるほど資料がなさそうなので、突っ込まれるとしたら非有識者からのお気持ち視点になります。ここは本編で上手くフォローが可能でしょう。気にならなければ詰めずに行きましょう。


・りんの「筋を通す」について

 →これもかなり個人的な意見になってしまいますが、当時の町人身分と武士身分にはかなりの隔たりがあり、互いに仲良しとも言い難いため、町人が武士身分のような価値観を表立って通すかどうか(イキっているという目線で見られうる)という点です。

 が、これも本番突っ込まれるとは考えにくいので、スルーでも良いかと思われます。


・たきとりんの関係性について。応援したくなるかどうかについて。

 →「ギャグマンガ日和の聖徳太子と妹子を応援したくなるかどうか」については、「もっと見ていたくなる」に尽きます。もっと見ていたいからこその、応援です(応援すれば続きが出るから)。

 カリスマ部分で魅力を集めたいイメージです。

 井戸先生であれば健気系キャラで票を集めるのに強いのですが、当方はその点がそんなに強くないので、自分が健気で勝負するなら「そうみえないキャラが、急に健気要素を出すギャップ」でカリスマ性を作り、「もっと見ていたい」「応援したら続きが見られるんですか?」に繋げていきたいです。


御手洗潔も自分は好きなので、そっち方面で詰めるのも良いでしょう(エンタメ寄りかハードボイルド寄りかで、本質はそんなに変わらないと思います個人的には)

2025年6月27日 午後10:53



 このあたりのやりとりは面白かったですね。パートナー制のもっとも面白いところが、自分の気がつかない角度からの意見をいただけることだと思います。特別会場でなくても、普段からこういうやりとりが可能な、信頼できる相手がいると創作の幅が広がりそうです。


 このあと、本庄さんがアンパンマンのツイートでバズりちらかしたり、大河ドラマに髪結いが出てくることを知ってネタ被りだと落ち込む阿下を励ましてもらったりするのですが、そのあたりのやりとりは割愛します。


 そして、8月に入ってようやく初稿が書きあがります。まずは文字数をそれほど気にせずに書いてみよう、ということで盛り込みたいことを全部盛り込んだところ、6800文字になりました。削除地獄の始まりです。もりもりの初稿は次項へ。

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