第2話
目が覚める。深い眠りから目覚めたような、頭がリフレッシュされた感覚で目が覚めた。
どうやら路地裏で寝ていた………路地裏?
ふと、横から明るい光が差し込んできた。
そちらの方に視線をやると、その方向には見たことのない建造物が建ち並び、たまに人が通り過ぎたりしている。
「………は?」
突然の出来事に狼狽してしまった。
「……俺は確か…橋から転落した…はず……」
どうやって生きた?と頭の中で思考を巡らす。
周りを見渡すが、魔法陣のようなものは無い。
神様に出会った…そんな事はない。神様に出会わずに転生した…にしてはここでの記憶は一切ない。
そんなふうに俺は解釈の一致しない案を考える。……しかし、どれも当てはまる事はなかった。その為、先程の考察は打ち切ることにした。
「……やめようか。…それよりもこの先、どうするか…だな」
振り出しに戻った俺は辺りを再び見渡す。
街並みは綺麗で人通りはそこまでだが、日が登っているところを見て、まだ朝か。と思った。
……結局、どうすればいいのかでさえ見つけられなかった。俺はその場でしゃがみ込み、ため息を吐く。
……すると、
「大丈夫ですか?」
と、少し赤みかかった白い髪の女性が話しかけてきた。
「まぁ…大丈夫ではないですね」
俺がそう返すと、「えっ!?」と彼女は驚いた。…そこまで驚くものか?
「え、えっと…何があったんですか?」
「えっと、実は───」
俺は彼女に事の顛末を話すことにした。
・・・説明中・・・
「そんなことがあったのね…」
彼女は感情移入しやすいのか、真剣な表情で話を聞いてくれた。
「だったら、私がこの世界について教えてあげる!」
何度か首を傾げると突然頭を縦に振り、彼女は自信満々に宣言した。
この言葉に俺は「いいのか!?」と反応する。
この世界のことを一切知らないからありがたかった。
「大丈夫よ!ここではそういった話は珍しいくらいだから」
「そ、そうなのですか」
初めてのことではないんだなぁ。と声には出さずに俺は思った。そしてあっと何かを思い出した声が聞こえてきた。
「そういえば名前言ってなかったね。私の名前は『リンネ』よろしく!」
「お、おう」
「あなたの名前は?」
「名前……か」
なんだっけな…と素振りをする。
「そうだな、俺の名前は『ダンテ』…だな」
「わかった。ダンテ…それじゃあ案内するね」
「お願いさせていただきます」
そういって俺はリンネさんにこの世界について教えてもらうこととなった。
この世界では俺みたいな来訪者は稀にいるらしく、時には召喚されることもあるらしく、この世界の住人は驚くことではないようだ。
この街は『ユルディア』と呼ぶらしく、彼女が知っている中で一番快適な生活をしやすい街らしい。
この街では珍しく外壁に囲われているらしく、それぞれに東西南北の門がある。なのでそこからであれば外に出れるみたい。
ほかにも、大きな広場では夜になると屋台が出てきて人が賑わっているのだったり、赤い屋根と青い屋根ぐらいしか違いが見分けにくい宿屋があるとか、外壁に近い所に冒険者がよく使う質屋や鍛冶屋があるなど、さまざまなことを教えてもらった。
そんなふうに街をまわっていると、リンネさんが突然、ぼーっと何かを眺めていた。
「何かあったんですか?」
「……あ、ご、ごめんね。ちょっとよりたい所があって…」
もじもじとリンネさんはそう聞いてきた。
俺はリンネさんがもじもじしているのを見てなんとなく、あまり見られたくないものなのか?と思った。
「だったらどこかでまた集合しますか?」
「そ、そうね!それでしたら…あの時計のとこで集合しましょう!」
「わかりました」
「それじゃあ、行ってくるね」
「ああ、気をつけろよ」
「……。大丈夫だよ!」
手を振りながらリンネさんは建物の並ぶ中にある店へと入って行った。
───どうして……声が詰まったのだろう。
心の中で私はそう思っていた。
あの時、ありがとう。という言葉が喉から出せなかった。
でもどうしてそんな言葉を言おうとしたのだろう。ありがとうと言うことなんてまだ起きてないのに…。
私は目的の場所に向かっている間、そんなことを考えた。けれど目的地に着くと今考えていたことは消え、何を買うかの思考へと変わったのだった。
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