異世界で暴れていたら何故か英雄扱いされた件

雨夜類(あまよるい)

第1話


「───はぁ、流石にこれはないだろ…」

俺はそう言葉を零し、今でも車が通る橋の上にて、ギリギリ人が通れる足場を歩いている。

何故、そんなことをしているか。簡単に言えば、いじめによって橋に吊るされた大事な物を取ろうと、慎重に歩いている最中だ。

「……今日は風が吹いてなくてよかった」

今は一本の鉄骨を匍匐前進で歩いている。……というかよくあそこに置いて行けたな!?流石の俺でも身体の芯が震えているぜ!

「……ぐッ、あと…もうちょっと……」

鉄骨に抱きつきながら右腕を伸ばし、先の曲がった鉄骨に引っかかっているネックレスに触れる。グッとまた腕を伸ばし……ネックレスを手に取る。

「よかった…!さて、あとは帰るだけだ!」

そういい、ゆっくりと後ろに戻っていく。


「──後…もう少し……よし。ここまで来れば!」

そうして俺は橋の上で狭い道まで戻り、立ち上がる。

「はあぁぁ……怖かった」

くれぐれもあんなとこには行きたくないなぁ…と心の中で呟き、帰路を辿ろうとした。




……………しかし、この世は残酷だ。

俺の隣を通り過ぎるトラックから、一本のパイプが俺に目掛けて飛んできた。

そのパイプに気づかず、俺は──



「グァガア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ──!!??」

そのパイプに足を貫かれた。

じんじんと感じる痛みは赤熱した鉄で焼かれるようで、その痛みに耐えきれず、絶叫とも言える声が橋の上で響いた。

そして運が悪かった故か、端から転落した。



刹那、声が聞こえてきた。


『もう…無くしても私が作ってあげるのに〜』

ぷんぷんと不貞腐れた声は昔聞いた妹の声だった。

『ねえねえ、これあげる!私が作ったんだよ!』

今度はネックレスを渡された時の声が聞こえてくる。

「───これが俗に言う走馬灯……か」

最後にそう言葉を吐き、段々と意識が薄れていった。




『────死なないでよ…ッ…お兄ちゃん……ッ………1人に…しないで……』


最後に聞こえてきた声はか細く、1人顔を手で覆い隠した少女が泣いている。

そんな声が聞こえた。

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