第4話 「地域戦 ―中東編―」



序 ― カオス視点






市場は色とりどりの布で溢れていた。


香辛料の匂い、熱気、人々の声。


だがその喧騒の中で、ひとりの女が静かに歩く。




カオス戦士 ヴェール。


彼女の顔は白布で覆われ、眼すら覗かない。




【条文:覆面契約】

「顔布を纏う観衆の数が一定を超えた場合、区域内の全顔を強制的に覆面化する」



彼女の歩みに合わせ、市場の女性たちのベールが黒に染まる。


布は顔を隠すものではなく、顔そのものを消す契約へと変わっていく。




人類が顔を失うまで――あと16日。









1 ― コスモス視点:契約署名






市場の一角で布を売る若い商人の娘 サーラが声を震わせた。


「お客さまが皆、顔を覆われて……。笑顔がなくなってしまう!」




御影蓮は市場の石畳に契約書を広げる。


「担保は生命。報酬は“自分の布で顔を飾る権利”。署名を」




サーラが指を押すと、布地が光を放ち、テントやバザールの屋根が契約舞台へと変貌した。




現れるのは――コスモス戦士 エリス(西園寺葵)。


白布をまといながら、守護面が透き通る光を放っていた。




「顔布は文化。でも、消すためじゃなく守るためのもの!」









2 ― カオス視点:覆面の拡張






ヴェールが市場全体を見渡し、布を翻した。


観衆の顔が次々と黒布で覆われ、表情が消えていく。




【条文:沈黙の布】

「覆面下では、観衆の声と表情を封印」



市場は静まり返り、買い物客も商人も同じ無貌の群衆に変わった。




「布は同調。異なる顔は不要」









3 ― コスモス視点:布を取り戻す






エリスは深呼吸し、布を手に取った。


「覆うことは罪じゃない。でも、それは同じ顔になるためじゃない」




彼女は市場の人々に声を放つ。


「あなたが選んだ布で、あなたが選んだ顔を作ればいい!」




【条文:彩布契約】

「観衆が“自ら選んだ布”を顔に纏った場合、覆面契約は無効化」



布屋の色布が光を帯び、観客たちの覆面が一枚一枚違う色へと変わる。


赤、青、金、銀――多彩な布が再び市場を彩った。









4 ― カオス視点:逆襲






ヴェールは立ち止まり、布を自ら剥ぎ取った。


そこにあったのは――完全な無貌。




「布の下は無だ。装飾は幻にすぎない」




彼女の無貌が市場全体に映し出され、人々の布が一瞬で黒に戻ろうとする。









5 ― コスモス視点:共鳴






エリスの面にヒビが走る。


だが次の瞬間、背後から歌声が響いた。




セイレン(天城リナ)が市場に駆けつけ、祈りの旋律を紡ぐ。


「布で覆っても、声は届く!」




歌と布が共鳴し、布そのものが表情を取り戻す。


笑顔の布、涙の布、怒りの布――多彩な感情が色彩として浮かび上がった。




ヴェールの無貌は色に塗りつぶされ、崩壊する。









終 ― コスモス視点






市場に笑い声と呼び声が戻った。


サーラは色布を抱え、涙を流した。


「ありがとう……布は顔を消すものじゃなく、飾るものだった」




エリスは頷き、セイレンと目を合わせた。


「文化と契約、その狭間で私たちは顔を守る」




御影蓮はタブレットを閉じ、静かに息を吐いた。


「契約の解釈次第で、文化は闇にも光にもなる……」









エピローグ ― カオス視点






闇に消えたヴェールの声が残った。


「顔を覆う布が、守るものか消すものか……。次の契約で答えを見せよう」




人類が顔を失うまで――あと16日。









第4話「地域戦 ―中東編―」・了









これで第二部 第4話が完成しました。




舞台:中東の市場

新カオス戦士:ヴェール(覆面契約)

エリスとセイレンの共闘で勝利

「布=文化」の二重性を描写

カウントダウンは あと16日

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