第2話 「地域戦 ―アジア編―」
それでは、第二部 第2話 「地域戦 ―アジア編―」 をノベライズ化してお届けします。
ここでは日本を離れ、アジアの寺院を舞台に「文化と顔」の意味が試されます。新世代戦士エリスとセイレンが初めて実戦に挑む回です。
契約戦記 フェイスコード 第二部 ―面影継承録―
第2話「地域戦 ―アジア編―」
序 ― カオス視点
静寂は、信仰を侵す。
祈りは声であり、顔であり、信者を縛る契約そのもの。
石造りの寺院。並ぶ仏像の顔がゆらぎ、ひとつずつ無貌に塗り潰されていく。
人々は恐怖よりも先に畏れを抱いた。
「仏像の顔が消える……」
だが我らカオスにとっては、これが自然な回帰だった。
「顔は偶像。祈りは無貌の沈黙から始まる」
寺院に現れたのは、白い面をかぶる戦士――シェイド。
【条文:偶像剥奪】
「信仰対象の顔を消去し、観衆の表情を同化させる」
彼女は観客の信仰心を糸に変え、像と人の顔を同じ無貌に縫い合わせていく。
人類が顔を失うまで――あと18日。
1 ― コスモス視点:契約署名
タイ北部の山間にある大寺院。
僧侶たちは合掌しながら震えていた。
「祈りの顔が……消えてしまう」
御影蓮は石畳の上で契約書を広げる。
「担保は生命。報酬は“祈りを顔で伝える権利”。署名を」
長老僧が指を押すと、寺院全体が光に包まれ、契約舞台となった。
鐘楼が観客席に変わり、仏像が次々と瞳を閉じる。
そこに立つのは、エリス(西園寺葵)とセイレン(天城リナ)。
二人は初めて実戦で並び立つ。
「これが……契約舞台」
エリスの守護面が微笑を浮かべ、瞳に光を宿す。
セイレンはマイクを握るように両手を重ねた。
2 ― カオス視点:無貌の祈り
シェイドが手を広げる。
信者たちの顔が次々と仏像の無貌と同期する。
【条文:祈顔同調】
「観衆が祈りを行った場合、顔の表情は自動的に消去」
合掌の姿勢そのものが署名となり、人々は無貌の群衆へ変わっていく。
寺院の鐘が鳴る――だが、その音すら無音だった。
「祈りに顔は要らない。沈黙こそ信仰だ」
3 ― コスモス視点:初めての反撃
エリスは震える指を前に突き出す。
【条文:真実の笑顔】
「観衆の半数以上が“強制されない笑顔”を浮かべた場合、偶像剥奪を無効化」
彼女の面が光を放ち、信者の一部が自然に微笑んだ。
「祈りは強制されるものじゃない。自分で選ぶから尊いんです!」
同時にセイレンが声を張る。
【条文:祈声回帰】
「沈黙の祈りを歌声へ変換する」
彼女の声が鐘楼を震わせ、失われた音を呼び戻した。
僧侶たちの合唱が重なり、無貌の同調が崩れていく。
4 ― カオス視点:圧力
だがシェイドはさらに深く手を差し伸べる。
仏像が一斉に顔を失い、黒い光を放った。
「観衆はすでに沈黙を選んだ。お前たちの顔は異端だ」
【条文:偶像支配】
「信仰対象が全て無貌となった場合、区域の全顔を強制消去」
黒い波が寺院全体を覆い、エリスとセイレンの守護面にも亀裂が走る。
5 ― コスモス視点:共闘
「リナさん!」
「ええ――一緒に!」
エリスは自然な笑みを、セイレンは祈る歌声を放つ。
光と音が重なり、守護面が二重に輝く。
二人の声が合わさり、条文が新たに編まれる。
【共条:再誓契約】
「強制されない笑顔と祈りの歌が合一した場合、偶像は本来の顔を取り戻す」
無貌だった仏像の顔に、静かな眼差しが戻った。
僧侶たちの祈りが声となり、沈黙を突き破る。
シェイドの仮面に亀裂が走り、崩壊。
彼女は黒煙となって消えた。
終 ― コスモス視点
寺院に光と音が戻った。
僧侶たちは泣き笑いし、合掌の中で自然な表情を浮かべる。
エリスは深呼吸し、セイレンと目を合わせた。
「これが……私たちの戦い」
「はい。声と顔で、祈りを守れました」
蓮はタブレットを閉じ、胸ポケットの鏡片を握った。
「新しい条文が書かれた。……面影は、次世代に繋がっている」
エピローグ ― カオス視点
だが、闇が消えたわけではない。
偶像を奪うことは失敗した。だが観客はまだいる。
「19日の針は動き出す。
顔を守りたいという意志が強ければ強いほど、
観客署名は必ず裏返る」
人類が顔を失うまで――あと18日。
第2話「地域戦 ―アジア編―」・了
これで第二部 第2話が完成しました。
舞台:アジアの寺院
新カオス戦士:シェイド(偶像剥奪)
新コスモス戦士:エリス&セイレンが初共闘
新条文「再誓契約」が誕生
カウントダウンは あと18日 に進行
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