1年

 仕組みはよく分からないけど、なんか、満仲は許された。


 渡された通信端末によると、行方不明という扱いらしい。吹雪なので捜索は断念。やむなく死亡扱い的な。


「これでおまえも、俺と同じ存在しない人間だな」


 なぜ助けたの。言おうと思って。やめた。


「伝わってくるけどな」


 あっ手。しまった手繋いでた。


「笑ってたからだよ」


「笑ってた?」


「雪に埋もれて、寒かっただろうに。おまえは笑ってた」


 それは、まぁ。くそみたいな境遇から離れられると思ったから。笑ってたのかも。


「それが、ちょっとかわいそうだなと思って」


 それから。風後との生活が始まった。

 といっても、特別な何かがあるわけでもない。普通に、ドローン運送頼りの普通の生活。ここが孤立した雪山の一軒家だって、忘れそうになるぐらいには一般的。


 風後は、いつも山を見てた。

 どんな感情なのだろうと思って、手を握ろうと思うけど。思うだけで、繋げてはいない。山を眺める顔が、あまりにも儚げだったから。ちょっと美術品というか、綺麗すぎて使うのためらっちゃう皿とか、そんな感じ。ふれてはいけないもののような、気がする。


 夜は、抱き合って眠る。

 お互いの夢が繋がって伝播して、とても楽しかった。ひとりじゃない。眠っている間、常に風後の存在を感じる。くそみたいな境遇にいた頃は、まったく感じなかった感覚。暖かくて、優しい。

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