1年
仕組みはよく分からないけど、なんか、満仲は許された。
渡された通信端末によると、行方不明という扱いらしい。吹雪なので捜索は断念。やむなく死亡扱い的な。
「これでおまえも、俺と同じ存在しない人間だな」
なぜ助けたの。言おうと思って。やめた。
「伝わってくるけどな」
あっ手。しまった手繋いでた。
「笑ってたからだよ」
「笑ってた?」
「雪に埋もれて、寒かっただろうに。おまえは笑ってた」
それは、まぁ。くそみたいな境遇から離れられると思ったから。笑ってたのかも。
「それが、ちょっとかわいそうだなと思って」
それから。風後との生活が始まった。
といっても、特別な何かがあるわけでもない。普通に、ドローン運送頼りの普通の生活。ここが孤立した雪山の一軒家だって、忘れそうになるぐらいには一般的。
風後は、いつも山を見てた。
どんな感情なのだろうと思って、手を握ろうと思うけど。思うだけで、繋げてはいない。山を眺める顔が、あまりにも儚げだったから。ちょっと美術品というか、綺麗すぎて使うのためらっちゃう皿とか、そんな感じ。ふれてはいけないもののような、気がする。
夜は、抱き合って眠る。
お互いの夢が繋がって伝播して、とても楽しかった。ひとりじゃない。眠っている間、常に風後の存在を感じる。くそみたいな境遇にいた頃は、まったく感じなかった感覚。暖かくて、優しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます