第一章:成長

第1話:転生から成長

(これが最期の目を閉じる瞬間か……もうこの目を開ける瞬間はないんだろうな…)


しかし、また目を開けることができた。

見えるのは綺麗に描かれた天井。生前にもよくみた景色だ。今見えている天井の模様が違うことに気がつくのには少し時間がかかった。気がつくには遅すぎた。ここが貴族の家であるということに。でもどうしようもなかった。


…熱い!……苦しい……助けて…


炎に焼かれて死産ということで処理されたのだろうか……

まだ声も発生できない赤子には助けを呼ぶ事もできない。

そしてまた目を閉じた……


ユアン自身でも何が起こっているのか何もわからない。生まれてきては殺されて、また生まれてきては殺されてを繰り返すだけ。

生き地獄を経験した。



…また目を開けれた。まだ心に余裕があり、希望に満ちていた。でもだめだった。


 目を開けて、周りの目を見ると憎悪、軽蔑、そんな視線が集まっているのを感じた。生前は尊敬の目が多く、この状況に慣れていないんだと自分に言い聞かせ続けた。


 理由は………知りたくない。


 何回繰り返しただろうか……心が折れ始めてからまだ少ないようには感じる。6,7回程度だろうか?


 ”もうどうでもいい。転生なんてろくなことがないな……”


 私は生前なにかしたか?こんな目に合うようなことをしただろうか……私は人類に多大な影響を与えて、みんなから尊敬されるような人だった。なにかいけないことをしたのか…思い出せない。

 世界からすべてを否定されているような気がしてたまらない。

 っはは、思い出せないなんて、ただの言い訳だな……神の気まぐれさ……


 もういいよ……


 また目を開ける。今までは憎悪と軽蔑の目を向けられ、絶望に浸っていた。

 でも今回は違った。安心の目、嬉しい目、感動の目いろんな目が向けられていた。


 私は泣いた。



―――私は王国から離れた小さな集落スノロム村にて生まれた。

 北方に位置し、夏になると快適で、冬は非常に寒い。内陸に位置している村なので雪が降ることは少ない。村の雰囲気もよく、みんなで協力して生活している。

そこまで貴族ほどの裕福さではないが、父が冒険者という職業柄、かなり収入も多いそうだ。


「父上!」


「おう!どうした?剣でも習うか?」


そう彼が私の父、アレン・ラフナ。冒険者だ。見た目は平民の生まれのよう。でも体は鍛え上げられていて、剣士をするうえでとても向いている。


「ちょっとアレン!?まだ4歳よ?」


 彼女がカミラ・ラフナ。私の母だ。見た目はいたって普通のお母さん。髪の毛は長く、茶色。背丈は少し小さく、16歳ほどの高さ。


「そう言わず、剣は習っておいて損はないぞ?ルーク?」


 そして転生して授けられた私の名前はルーク・ラフナ。元気な男の子。生誕から4年が経ち、今に至る。今は、4年という猶予があった故、精神的にも安定している。そして気づいたことがある。

 左目が見えないということ、右腕がないということ。そして、私の体に魔力がないということ。


 生前は最強と言われた私だが、今となっては無駄な知識を蓄えている役立たず。しかし、新しい生き方というものを見つけられる可能性もあり、今は充実している。

 転生してすぐ死ぬことがあったからこそ、逆に今こうして折れずに生きていられる。

 もうあのときはどうでも良かった。生きてこの世界にいられることの嬉しさを知った私は、魔法なんてもうどうでも良かった。ただただこの世界で生きたいの一心。


 ”アレンとかミラの子に生まれてよかった”言葉にするのはもっとあとだろうな…

まだ気が早いように感じるが、生き地獄を味わった身からすると、全部打ち明けて話したい…


4歳なのにここまで賢いなんて街の人から言われたりしているが、転生前の記憶を持っていると、歩き方や走り方、知識など知ってて当然。

どうしたものか、ここでの大人は16歳から。すでに1/4歳は過ごしているという事実。8歳くらいになれば才能があるんだと言われるだろうな。


 生前に「今度生まれ変わったら剣でも習おうかな」が現実となってしまった。それでも片腕がないことは大きな不利的要素。剣を習うには全く足りない体なのだ。

 かと言って、剣を捨てるわけでもなく力に頼らない剣術もあるそうだ。だから私はその剣術を習って新しい人生を歩む。


 生前記した魔力を増幅する方法をしてみたが、0からは何も生まれないということを思い知った。剣士への憧れもある。だから私は剣を習う。


 剣を習い始めたのは4歳頃から。父からは様々なことを学んだ。両手を使えないことから、片腕で戦う方法を教わった。剣で大切なのは自身の技術ではなく、相手の動きを読むこと。下手でも、攻撃が当たらす、隙を見せるよう誘導できれば、勝負はこちらに傾くと。


 父の冒険者の話をよく聞くが、すごい人物であったことを知る。

Aランク冒険者で、地方から専属契約を申し立てられるほどの実力者のようだ。

 こんな人物に教えられるということなると、こちらとしても教わる側として精進しないと……


 生活は安定してきた。朝5時に起き、走って体力をつけ、家の家事をする。とは言っても、簡単な掃除等しかできないけれど…


 6時になると母カミラが起きて、朝食を用意する。朝食が用意できるとカミラが父アレンをお起こしに向かう。


 朝食を食べ7時になるとアレンは町中スノロム村の見回りを午前中行う。そう、父はこのスノロム村と契約しているのだ。


 12時になるまで素振りや、イメージトレーニングを重ねる。父もこの頃になると帰ってきて、一緒に昼食を食べる。

 その後は稽古をつけてもらう。

 そんな生活を続けて1年がたった。


「ルーク、最近俺の動きを読み切っているだろ?だから、家庭教師を雇おうと思う。新しい人と戦うのは貴重な経験だ。お前にはまだまだ強くなる余地がある。もしかしたら俺より強いかもな。っはははは!」


そう対人での稽古はいつしか相手のパターンを知ることになる。すると次は、こう来る…知っているような動きしかできなくなり、いざ実践となると動けなくなることが多い。


「アレン?ルークに期待しすぎるのは逆にストレスでしょ?」


「期待しないほうがおかしいくらいの成長速度だぜ?これはAランクは確定だぜ?

というかもう雇ってしまってね。俺のもとパーティーメンバーだ。ルーク、お前と同じで片腕を失ってしまった人なんだ。学べることが多いと思うぞ。」


 1週間後、アレンの外出中に家庭教師と思われる人物が訪れた。それにしても早い到着だった。最も近い王国からスノロム村まで休憩を挟んで2週間はかかる距離。


「お初目にかかります。アレンの元パーティーメンバーのエルと申します。」


「はじめまして、アレンの妻カミラです。ルークのことよろしくお願いします。」


「ルークです。よろしくお願いします。…女性なのですね…てっきり男性かと……」


「カミラさん。ルークはいくつでしょうか?」


「5歳ですよ!すごいでしょ?賢いでしょ?ルークはすごいんだから」


「まあ、いいでしょう。早速稽古しましょう。」


 アレンの言う通りエルは片腕がなかった。それでもまだ現役で冒険者として活躍している。今は魔物の活動が静まっているので半年間の滞在予定だそうだ。


 ◆◆◆稽古◆◆◆


「ちょっと稽古する前に気になってな。その腕は生まれつきか?」


「えーっと、幼いときのことで記憶が曖昧なので覚えていないんですが、アレンからは魔物に襲われて失ったと聞かされています。」


(嘘だろうな…アレンならここらに生息する魔物を相手にするなら守れて当然だろう。それにここに現れる魔物自体少なく、アレンが同時に5体の魔物と対峙しても無傷で対処できるほどに弱い)


「そうか。にしても、ルークお前口調が気持ち悪いくらいにかしこまっているが、カミラからの教えか?まあアレンがそんなことを教えることはできないだろうし…」


「えっと…本を読んでいたらいつの間にかこんな口調になっていました。」


「まあそんなものか…変に気にしていても稽古の邪魔だろうし早速稽古するぞ」


 第一回目のエル稽古にしてはひどい具合のしごかれ具合だった。頭が痛い。しかもまだ午前中という事実。でもあの転生の生き地獄よりかはマシな感じ。


 しかし、学んだこともある。まず片腕で生きていくうえで大切なこと。

 事情を知らない者からすれば、悪魔の使いであるということに認識される。

 この世界では体の一部が欠損した状態で生まれてくると、悪魔と契約し、強力な力を得て生まれてくるとされており、異端児と称される。

 私の場合は記憶を持ったままというのが強力な力ということでしょう。

 話がズレました。悪魔の使いとみなされても、忍耐強く生きること。事情を知られている場合は、尊敬されることもある。


「ルーク〜昼食の準備ができましたよ。エルさんもご一緒にどうぞ。」


「感謝する。」


「いいのよ。これからもお世話になるんだし、気にすることないわ。」


「…ただいま、もう昼食できてるか?」


 アレンの帰宅だ。服に血がついているから戦闘してきたのだろう。


「アレン!大丈夫?怪我してない?」


「なーに心配すんな。ただの返り血だ。俺自身は怪我してねえから大丈夫だ」


 とても仲のいい夫婦である。私も将来はこんな関係を築きたいものだ……私の生前はどうだったのか?一体何のことでしょうか…生涯を魔法に捧げたのです。魔法とは良い関係を築きました。実質的に魔法と結婚したのです異論は認めません。


 魔法の理論について知っていても実践で使えなければ意味ないですから……でも、魔法がなくたって研究は進めることはできますし、空気中の魔素を体外で魔力に変換し、操れるようになれば実質的に魔法が使えるかもしれない。

 今まで、魔法が使えることを当たり前だと思っていましたが、今の境遇に出会って変わりました。この世界には魔法が使えない人物だっているのだと。

 魔法が使える前提で私自身研究を進めていましたし、体内の魔力が尽きたときの状況を知りませんでした。世界で最も尊敬された魔法使いを言われたのも、こう考えると嫌になってきますね。

 魔力切れなんて情けない。そんなことを心の何処かでは思っていたのかもしれない。

 知らないからこそ研究に手を付けることがなかった。

 言い訳ですね。過去の自分が情けない。世界最強とも言われ、最も尊敬された人と呼ばれて浮かれていたようです。


「ルーク、ルーク?大丈夫?エルさんの稽古けっこう激しかったから、疲れちゃったのかな?」


「いえ、稽古の内容を振り返ってただけです。それに私本気で強くなりたいのです。」


「そうとも言われると、余計熱が入っちまうだろ?というか、午前中の稽古は剣を学ぶうえで基礎的なものだ。あんなものでヘタっているようでは、剣士にはなれない。午後は覚悟しとけよ?」


 エルの方もかなり教える身としては熱が入っていて、嬉しい限りだ。

 昼食を食べ終え、午後の稽古に入った。

 まずはエルとアレンの模擬戦を見る。どんな動きをしているのか見ることで自分もどう動けばいいかを知るためだそうだ。


よく観察すると、アレンとエルさんの距離が一定。少し離れれば攻撃は止めるし、近くなればまた攻防が始まる。これが間合いというもの。

自分の攻撃範囲を知れば、無策に突っ込んでくるものは敵じゃない。

剣筋を見ても、すべてまっすぐ。ブレない。

空気抵抗を最小限にし、速度を上げやすくし相手を切れるように剣先が通る。


「とりあえず、ここまでだ。まだ2割程度しか力は出していないが、いずれは

!!!!!!!…イテ!!おい!さっき終わりの合図しただろ?」


「すまない。よく見えなかったからな。」


 本気か冗談かよくわからない返事をする人だエルさんは。


「ルーク、とりあえずだ。さっきの模擬戦を思い出しつつ、俺にかかってこい」


 エルさんの足移動は綺麗だった。必要分の歩幅を取り、相手に近づく。踏み込みすぎても相手からカウンターを食らうし、踏み込みが浅くてもこちらの攻撃は届かない。攻撃が来てもすぐ引き返せるように攻撃の時以外は重心は後ろ。必ず勝つための足使い。


「どうした?後ろに寄って全然攻撃してこないじゃねえか?」


 そう言われると乗りたくなる。一回強く弾いて隙を作る。

 間合いに一歩踏み出し、攻撃が剣先の2割はいる程度入り込む。ここまでは計画。


「っは!引っかかりやがった!」


「引っかかったのはどっちでしょうね?」


 アレンの振りかぶった攻撃を体を捻って回避する。あとは太ももに攻撃を当てて一旦避難……攻撃はアレンがバク転することで避けられた。

 あとちょっとだったのに……


「いやぁ〜いまのは危なかったぜ。ルークの成長が目に見えて良くなっている」


「本当に5歳児かどうか怪しいぐらいだ。」


「剣士でもユアン程度称されたのは勇者くらいだしな……俺としてはルークには歴史に名を残してもらいたいものだぜ。」


 勇者…魔王を倒したものに与えられる称号…今は青星歴(せいせいれき)何年だ…?


「父上、今は青星歴何年ですか?」


「なんで星歴なんて知ってるんだ?こっそり本でも読んだのか!?

それになんで2つ前の暦のことを知ってるんだ?それにいまは紫星歴(しせいれき)6年だぜ?」


 色星暦(しょくせいれき)赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順で一周する。歴史的出来事が起こると次の暦に移行する。


「何があって星暦が変化したのですか?」


「青星歴から藍星暦(らんせいれき)に変化したのは大魔道士ユアンの死が原因だ。藍星暦から紫星歴になるまでは歴史的にみたら短いだろうな。

勇者が魔王の一人を倒したんだ。たった17年間の歴史だ。ユアンも可愛そうだな…自分が変えた星暦をたった17年で…―――」


 そっか…たった23年か…まだゼリアに会えるかもしれないな。

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