The万引き〜魔法少女になったのに戦うためには万引きしかないんですけど!〜
心月 むく
プロローグ:万引き魔法少女ギルティ
「ほんとにこれだけ買いに来たんですか?」
レジのお姉さんが不思議そうに見つめてくる。
それもそうだろう。
私が買ったのは10円ガム1つ。
それのみだからだ。
ポケットの中の異物の輪郭をなぞり、すった息でいつも通り嘘をつく。
「もちろんですよ、最近上司がニコチンガム切れた時に使ってるんです。」
「そうですか。大変ですね。」
(グッジョブ!!)
お姉さんはきっといつも通りのお辞儀をして送り出す。
その瞬間だった。
店にトラック並みのでっかい、、、
カルパスが飛んできた
建物は入口側から崩れていく。
もちろんコンビニは大惨事。
カルパスらしきものは半分ほどめり込み私の前で止まった。
「魔法ワッカルンに反応があったから来てみたらびっくりだなぁ〜」
奥からビリビリの真っ黒なスーツを着たリーゼントの男がやってくる。多分見た感じB級はある。
「こりゃ私も死ぬかな」
私が絶望(?)にひたっていると体を縄でぐるぐる巻きにした変態の妖精が話しかけてくる。
「アホなこと言ってないで早く力を使いなさいぐるよ」
もう見た目はいいから語尾だけやめて欲しい。ほんとに。
「はぁ、わかったわよ。」
「おいおい!?あのカルパス砲通称【グレートオイルミートバスター】を食らってたってる奴がいるとはなぁ。お前か?検知した魔法少女はよ。」
万引きする前に検知か。今度から長居もできないなぁ。
「そのだっさい名前は置いといて。魔法少女じゃないって言ったら逃がしてくれるの?」
「ああ逃がすさ。まあどう見てもアラサーだし。魔法少女って訳には行かないよな?」
ピキ。
私の中で、確かに。この音が鳴った。
「やるよ、なわぴ。縄になりな」
「了解ぐるよ」
私は縄になったなわぴを両手で張る。そして唱える。
「我森羅万象全てを盗むものなり」
なわぴがばらばらになり体の至る所に巻き付いていく。
風呂敷がスカートになり、仮面がつく。
どこからともなくスポットライトが当たり私はこう叫ぶ。
『万引き魔法少女ギルティ参上!!』
決まった。完璧な返信と口上。
あまりのインパクトに黒びリーゼントもぽかんとしている。
「ギルティ、、その名前どこかで、、」
「ふっ!!驚くのも無理はないわ!!なんたって私は、、」
ピーピーピー
ポケットから緊急信号の合図の音が振動と共に流れる。
今いい所なのに、、なんて思うが一応要件を聞いてみる。
「あの今いい所なんですけど〜」
「アホアカネ!!1時収集じゃって言っておったじゃろうが!!」
これは。私が悪いやつだ。完全に時計見てなかったし。でも、、
一瞬リーゼントの方を見て被害者声を作る。
「オーバータイムのヤツらに嗅ぎつけられちゃってさぁ」
「言い訳すな!!もうどうせまだ何もしてないんじゃろ?さっさと逃げてこんかい!!」
これ以上の言い合いは無駄かな、、敵も大人しく待ってくれないだろうし。まあ盗みはしたし。使えなさそうだけど
「了解」
通信を切り、ふろしきスカート横についてるポケットの中に手を入れてまさぐる。
今日は、、、
「これだ!!」
ポケットの中から取りだしたのはアイドルのライブ会場から万引きした「サイリウム」。
私はそれを片手で突き上げる。
「それでは皆さんごきげんよう。」
サイリウムがはじけると共に人間の目がやられないギリギリの光量を撒き散らした。
数秒もするとそこにギルティはいなかった。
ーーーーーーーーーーーーー
「で?何もせずに逃がしたって?」
まだ冷静ではあるがもう怒るための助走をつけている姉御に恐る恐る話す。
「いやぁ、なんか名前が引っかかって思い出せなくて、、」
「そんな理由で報告書を書かなきゃいけないこっちの身にもなって!!!」
ほんとにぐぅの音も出ないぜ姉御。
馬鹿な自分を軽蔑しながら俺は姉御に聞いてみることにした。
「姉御ひとついいすか?」
「何よ。」
これ以上怒らすのは怖いが聞かないのもスッキリしない。
「さっきのやつ、、「ギルティ」って名前だったんですけど、、」
名前を出した瞬間から、電話口から聞こえる騒音がでかくなる
「、、、あんた、戦わなくてよかったわね。」
「へ?なんでですか!!あんな三十路ワンパンですよ!!」
姉御の声は少し震えてるように感じた。
「ギルティ、やつは世界で初めての、、」
「初めての?」
「【S級魔法少女】よ」
The万引き〜魔法少女になったのに戦うためには万引きしかないんですけど!〜 心月 むく @fkk
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