第3話

「ここまで話をきて、少し冷静になれた。俺は帰るつもりだ。」

みんなの期待を裏切るようで悪いが、俺はそう思った。

ここまで話を聞いてきて、俺から動けることはあるはずだ。それに、他の人も。

そんな気がしたからこそ、俺は帰るという選択を選んだ。

他の七人が死んでも、俺はこのことを誰にも言わないつもりだった。

しかし、他のメンバーの返答は予想外のことだった。

「私も、帰ることにします。」

初めに声を上げたのは白羽根だった。

「紅さんの話を聞いて一つ案を思いつきました。私の場合、この手のいじめは警察に被害届を出すことができると思うので、それをやってみてから死ぬか生きるか決めたいと思います。」

「確かにな。俺の方は警察は動いてくれねぇかもしれねぇけど、教育委員会やらなんならこれどっかのテレビに情報渡したら報道されねぇかね。」

「確かにそうやな。俺にも協力させてくれや!」

「そうだな。この件は、俺と晴兎の内容でもあるもんな。」

その声に早乙女と橘が続き、他のメンバーも続く。

「俺も公然わいせつ罪で被害届出せないかな。それに、他四人は近隣住民からの通報ってていで児相ていうか警察に連絡できそうだしな。」

「そうだね。俺、今日初めてあざが残っててよかったって思ったよ。」

「それならあれだな。医者の診断書があればより証拠として強くならないか?」

「それもそうだな。だが、私はまだしも、二人はそこまで耐えるのは酷ではないか?」

「それなら俺は平気だ。タフだからな。」

「僕も毎日されるわけじゃないから。」

「俺は、早速警察に連絡だな。」

「もしかして、校門前に両親がいるの?」

「ああ。いる。だから警察に連絡する。」

「いいぞ〜やれやれ〜」

「ヤジを飛ばすな。」

今まで嫌なことがある旅に来ていたいい思い出のない屋上。

だけど、今日こうやってたくさん話をして、話を聞いて、少しだけ未来に希望を持てた。

死ぬことはいつでもできる。けど、生きていられるのは今のうちしかない。

だから、死ぬのはまた今度にするつもりだ。

哀川の合図で椅子を片付け、警察の到着を確認して八人で帰宅した。

関わったことない奴らだったけど、少しでも仲良くなれたような感覚がした。

明日、明後日。もっと先になるかもだけど全員の問題が解決したら集まって遊びにでも行きたいな。

一回り先に事件が解決しそうな俺はそんなことを呑気に考えて警察と一緒に事情を話すために警察署に向かった。





國守、錦、須藤は近隣住民からの通報ということで児相の調査が入り無事に家から逃げ出すことができたようだ。

早乙女と橘は教育委員会と警察に相談をして、証拠が十分あったことから相手を名誉毀損や精神的苦痛の方の傷害罪に問うことができたようだ。

早乙女も相手を暴行罪に問うことができ、哀川も相手を不同意わいせつ罪に問うことができたようだ。(相手をした男たちも未成年に手を出したということでしっかり捕まったらしい。)

かくいう俺も両親に接近禁止令を出すことができ、次近づいてきたら刑事罰に問われるそうだ。


現代社会、自殺する若者が年々増えている。その理由には家庭問題、成績、学校での人間関係などさまざまなものがある。

死ぬことはいつでもできる。なら今は少しでも生きる理由があるなら生きてみたらいいのではないか。そう、私は思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

屋上と八人の男子高校生 紅藍 @sui_sei_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る