第4話

去年の入学式で彼、仁野夢と出会った。最初こそ話したものの私が男子苦手というのもあり1週間もしないうちに話す時間はほぼゼロに近くなっていった。別にそれでも何の問題もなかったしそんな感じで時間が経っていった。

最初の定期テストが終わった日、誰もいない教室でたまたま鉢合わせたのだ。他愛もない話や自分の話をしてると割と盛り上がって結局最終下校時刻まで2人で教室で話してた、今思うとその時が去年1番平和な時間だったのかもしれない。

そこから教室ではあまり話さず、メッセージアプリでやり取りすることが増えた。他の男子と違う所は男子がジュースだとすると彼は水みたいな感じでさっぱりしてる人だった(褒めてる)、そういう所が株が上がるポイントだった。

しかし、彼と仲良くなって距離が縮まる一方で私の人生に段々雲がかかり始めた、そしてやがてその雲は濃くなり大雨が降り、雨がやんだ頃にはもう彼はいなくなっていたのだ。当時の私はそんな未来を夢にも思わなかった。

話したり、たまに休日遊びに行ったりしていく中で彼が私の人生の中で目立つ時間が増えた。距離が近くなりお互いのことを知るようになる中で私は彼の中にほんの少し闇があるのでは、と思うようになっていった。でも闇なんて誰にだってあるしなんなら気のせいかもしれないとその時は何も考えずにいたのだ。今考えるとそれは目を逸らしていたとも表現出来るかもしれない。

そして6月頃から彼は学校に来なくなったのだ。

「なんであいつ学校来んねん」

彼と同じ中学だった赤葉でさえも彼が学校に来ない理由を知らなかった。

どうしてかわからないけど彼に学校に来ない理由を聞いてはいけないような気がした。理由を聞いたら関係が壊れるような気がした。この時初めて自分が彼との関係にヒビが入ることを恐れていたことに気づいた。

そこから彼とは一切やり取りをしなくなった。

どんよりと虚無な心と違って信じられないくらい外の気温が暑い7月の後半に彼と遊ぶ約束をした。言い出したのは私だ。

信じられないくらい暑い外でも彼といると暑さはあまり気にならなかった。順調に時間が進んでいたにも関わらず移動の電車の中でふと会話が止まった瞬間、どう狂ったのか分からないが私は彼に聞いてしまったのだ。

「ねえ、どうして学校に来てないの?」言った瞬間に後悔した。

おかしな事に聞かれた側の彼は顔色を変えず発言した私の方が動揺してしまった。


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