一
元治元年六月、尊王攘夷派の志士たちが池田屋で会合することを察知した新選組が池田屋を強襲することに成功した。尊王攘夷派の筆頭が長州藩士であり、その一人がこの男、桂小五郎であった。オレは桂小五郎に連れられて対馬藩邸に匿われた。別にその辺の寺で野宿でもよいと申し出たが沖田総司を半殺しにしたことで新選組がオレを追っているらしい。新選組そのものを壊滅させてもオレとしては問題ないのだが、桂小五郎は少しは慎重にいけとオレを諭してきた。とりあえず対馬藩邸を警護するという名目で対馬藩邸に世話になっていたある日のこと。
「あんたかい。沖田の坊やを半殺しにしたっていうのは?」
明らかにくノ一と思しき恰好の忍びがオレに近づいてきた。
「人にものを尋ねる時はまず名乗れ。見たところ伊賀衆のようだがオレは高くつくぜ」
何が高いのかわからんが。
「ふううううん、伊賀衆ね⋯⋯。あんた、いつの時代の忍び? そう、あたしは伊賀忍者の流れをくむ服部家の御庭番衆の火炎の茶鈴。で、あんたは?」
火炎ってことは、雪乃の流れか⋯⋯。
「オレは伊賀下忍カヤトだよ。服部って、あの口の利き方を知らねえ服部半蔵か⋯⋯。つまんねえな」
「お前。服部様のことを⋯⋯」
茶鈴はそう言って忍び刀を抜刀した。
「お主、その忍び刀どこで拾った?」
「はあ? これは由緒正しき火炎の刀だ。お前、本当に失礼な奴だな」
いや、これは間違いない。オレが使っていた忍び刀だ。間違いない。滝川一益との一戦での傷も一致している。
「そうかい。じゃあ、力ずくで取り戻すまでだ」
オレはそう言って右の掌に力を込める。
「丸腰であたしとやろうっていうのかい。本当、身の程知らずな奴⋯⋯」
茶鈴の言葉を最後まで聞かずに対忍の用雷撃を発動する。
「電光石火」
オレの右手から放たれた雷撃はまばゆい光を伴い茶鈴を襲う。オレの雷撃を食らった茶鈴は前のめりに倒れ込んだ。
「それで御庭番衆を捕らえたってことか⋯⋯」
茶鈴を捕らえて対馬藩邸に連れていくと、桂小五郎は戸惑いを隠せない。
「まあ、どのみち殺さなければいけないんだが⋯⋯」
オレはそう言って忍び刀を桂小五郎に見せる。
「この刀の傷を見ると、オレが平楽寺で滝川一益と
そりゃ、三百年経っているんだから古ぼけているのは仕方ないよな。
「それで?」
桂小五郎の言葉にオレは苛立つ。
「オレの刀を服部半蔵が己のモノのようにしたとすると許せねえじゃねえか。その辺ハッキリさせないと⋯⋯」
「世の中、ハッキリさせない方がいいこともあると思うが⋯⋯」
桂小五郎は口ごもる。
「どのみちオレたちがここに隠れているのはバレちまったんだ。覚悟を決めようぜ」
オレの言葉に桂小五郎は渋々頷く。
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