しばらくすると、対馬藩邸の地下牢で茶鈴は目を覚ました。


「あたしにこんなことしてタダで済むと思っているのか」


「オレの全力の雷撃は安土城をも落とすと百地丹波のお墨付きだ。もう一度訊く。この刀はどこで拾った?」


「何度も言わせるな。この刀は由緒正しき火炎の忍び刀。お前こそ服部様を愚弄する不埒者。今にみておれ」


茶鈴の言葉にオレは黙り込む。


「なるほど徳川家康は伊賀越えの恩を仇で返したというわけか⋯⋯。もう一つ訊く。明智光秀殿はどうした?」


茶鈴は首を傾げる。


「山崎の戦いの直後に落ち武者狩りで死んだと聞いているが」


桂小五郎はそう言って地下牢に現れた。


「おかしいな。オレが救出して岡崎城まで連れて行ったのだが⋯⋯。なるほど、それも無にしたか。よく分かった。よおおおくな」


オレは唇を噛み締め怒りを押さえつける。


「カヤト、やっと見つけた」


茶鈴がおかしな言葉を発する。


「お主どうい⋯⋯」


「カヤトの記憶の在処が分かったよ。この女の身体で連れてくよ」


「サチか? 何処にある?」


「伊賀の山奥の祠だよ。どうする?」


茶鈴の顔をしたサチがオレに尋ねる。


「そうだな。記憶が戻らなければできないこともあるだろう。桂殿、この女と伊賀に行くことにする」


オレの言葉に桂小五郎はしばし戸惑うも、口を開く。


「妖術の類か⋯⋯。ここからその御庭番衆が消えてくれるのはこちらにとっても好都合。好きにしてくれ」


「それでは、ご武運を⋯⋯」


オレはそう言い残して、茶鈴とともに対馬藩邸を後にした。


 京の都を出て大和路に入ったところでオレはサチに訊く。


「憑依の術などどこで覚えた?」


「これって憑依の術っていうの? じゃあ、うちはサチに憑依してたんだね」


「お主、何者?」


オレの言葉に茶鈴は首を横に振る。


「言わないほうがいいかも⋯⋯。どうせカヤトが記憶を取り戻せばわかることだから⋯⋯」


茶鈴はそう言って黙り込んだが、伊賀に近づいた時ふたたび口を開いた。


「それからね。悪い知らせがあるの」


「なんだよ。もったいぶって」


「あの日以来、雪乃の魂が行方不明になっているの⋯⋯」


魂?


「雪乃は堺に帰っていないのか?」


茶鈴は首を横に振るばかり。


「着いたよ。カヤトだったら封印を解けるかも」


茶鈴の言葉に押されオレは祠に一人で入る。祠の奥に光の玉が見える。


アレがおそらくオレの⋯⋯。

オレのなんだよ?


オレはしばらく考え込む。


こういう時はアレだ。


オレは思いっきって腰の鬼導丸きどうまるを抜刀する。辺りが墨絵のようになっているのだろうが祠が暗くてわからないが、光の玉だけは輝き続けている。オレは手を伸ばして光の玉を鷲掴みした。


いろんな記憶が頭に流れ込んでくる。


そうか。

雪乃は⋯⋯。


オレは全てを思い出し、鬼導丸きどうまるを鞘に収めて祠を出た。

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