第四部 幕末動乱

 あれからどれだけの時が経ったのだろうか。さすがに織田家の後継者争いは終わっているだろう。

ん、忍び刀が見当たらない。

どこで落とした?

まあ、いいか。


オレは比叡山の山道を下って歩いていく。


「おや、カヤトさん。今回は随分ゆっくりしていましたね」


旅の僧侶、もとい地蔵がオレに話し掛けてくる。オレは右手を軽く上げてこたえる。


ゆっくり?

どうゆうことだ?


オレは比叡山を下りて、京の都へ向かった。


京の都の町。こんなにきな臭かったっけ?

殺気立った黒尽くめの武士が京の町を足早に歩いていく。


真夜中だぞ。


オレがそんなことを思っていると周囲の景色は墨絵のような世界に変わっていく。オレの腰にある鬼導丸きどうまるは震えている。オレは鬼導丸きどうまるを抜刀し鬼を探す。


いた。

何者かを修復している。


その側には黒尽くめの男が一人。おそらくこの男が斬り殺したのだろう。オレは鬼の隣に立つが鬼は引き続き男の修復をしている。よほどの傷を負って死んだのだろう。かなり苦労しているようだ。やがて鬼は修復を終え地に消えていった。オレが鬼導丸きどうまるを鞘に収めると周囲の景色は色を取り戻していく。


「ん?」


黒尽くめの男がこちらの異変に気付き、刀を一閃。


危ねえ。

一瞬、持っていない忍び刀で受けようとした。

仕方ねえ。


オレは右手の拳に力を込め、黒尽くめの男に雷撃をぶち込む。


「雷光鞭」


オレの拳から放たれたまばゆい光は鞭のようにしなり、黒尽くめの男が持つ刀を叩き落とす。返す刀で男を撫で斬る。いきなりだったので威力は大したこともなく黒尽くめの男を斬ることはできなかった。まあ、この程度でも雷撃を受けたら立ってはいられないだろうな。オレは黒尽くめの男が蹲っているのを確認して修復されていた男を振り返る。


いない。

礼ぐらい言えよ。

まあいい。

ところで、雪乃と別れてからあれからどれくらいの時が経っているのだろう。

それにしても真夜中なのに物騒なヤツらが多すぎる。

本当に京の都なのか⋯⋯。


オレは気を取り直して歩き始める。しばらく歩くと腕を掴まれて路地に連れ込まれる。


「お主、強いな。妖術使いか?」


先ほど死んでいた男である。オレが黙り込んでいると男は話を続ける。


「俺は長州藩士の桂小五郎。先ほどはありがとう。完全に死んだと思った」


そうだな。

完全に死んでいたよな。

長州藩士って何だ?


「いやあ、さすが新選組一番隊組長の沖田総司だ。相手にならん。お主、どこの藩の者だ?」


新選組?

藩って?

国のことか⋯⋯。


「某は伊賀だ」


オレがそう言うと桂小五郎は目を丸くする。


「伊賀ってお主⋯⋯。御庭番衆か?」


御庭番衆?

なんか知らない言葉の連続だ。


「桂殿、久しぶりに目覚めたためお主が何を言っているのかわからないんだが、織田家の後継者争いはどうなったんだ?」


オレがそう言うと桂小五郎はしばらく黙り込んだがふたたび口を開いた。


「本能寺の変から三百年近く経っている。お主、何者か?」


三百年?

オレはそんなに寝ていたのか⋯⋯。


「オレはカヤト。京の都の守り神だ。乱世になると現れるらしいぞ。確かにこの様子だとかなり世が乱れているようだが⋯⋯」


オレの言葉に桂小五郎は苦笑いをする。

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