助けが来る日

朝日が水平線を染める頃、島の静けさが戻ってきた。

「音がする……船か?」

蓮が指さす先に、小さな煙が見えた。救助の合図に使った焚き火の煙だった。

「助かったかもしれない」

胸が高鳴る。数週間にも感じたこの時間が、ようやく終わりを迎える。

「蓮くん……ありがとう」

言葉が自然と溢れた。彼は少し照れくさそうに笑った。

「お前がいなかったら、俺もここまで来れなかった」

二人で手を取り合う。その重みが、どれほど深かったか。

しかし、心の奥には別れの予感があった。

「現実に戻ったら、また別々の生活だ」

「このままずっと一緒にいられたらいいのに……」

そんな想いが胸を締めつける。

島を去るその日、救助隊が近づいてきた。

「行くぞ」

蓮が私の手を強く握った。

「また会える?」

「……絶対に」

約束の言葉を交わし、二人は救助隊の船へと歩み出した。

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