嵐の夜
「雨が降りそうだ……早く戻るぞ!」
蓮の声に急かされて、私たちはシェルターへと急いだ。空は厚い鉛色に覆われ、遠くで雷が低く鳴っている。
「こんなに激しい嵐は、久しぶりだ」
蓮がシェルターの補強を急ぐ。私は彼の指示通り、倒れそうな枝を押さえ、ツルで結び直した。
だが、風は強くなるばかり。突然、木の枝が折れて大きな音を立て、シェルターの屋根の一部が崩れ落ちた。
「危ない! 中に入って!」
慌ててシェルターの中に入ったが、濡れた体が冷え切って震えが止まらない。
「葵、大丈夫か?」
「寒い……」
体温がぐっと下がったのか、手足がしびれてきた。蓮はすぐに焚き火を起こそうとしたが、湿った薪はなかなか火をつけられない。
「……熱があるかもしれない。無理しないで」
蓮が私の体に毛布代わりのヤシの葉をかけて、ずっと手を握ってくれた。
「ごめん、役に立てなくて……」
小さな声で謝ると、彼は首を振った。
「そんなことない。今はお前を守ることが、俺の役目だ」
その言葉に、胸が熱くなった。
嵐の音が轟く中、蓮の手のぬくもりだけが、唯一の救いだった。
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