第4話 帰りたい
あれから4日が経った。
日常では特に変化は無く、村の住人の畑仕事を手伝ったり、子供達と一緒に遊んだりと少しずつ村人との距離間を詰めることができた。
しかし、夢は如何にも不思議なものばかりを見てしまう。
あの時のような直接的なものではないが、誰かの記憶を追体験している感じで、これは自分の無くした過去の記憶であるのだろうか。
年上の男の子と遊ぶ夢、椅子に永遠とも言える時間座り続ける夢、暗いくて狭い部屋の夢。曖昧だけど、どこか既視感があるようなものであった。
─頭をぽんぽんと叩かれてやっと目が覚めた。
「お兄ちゃん、起きて」
リアの方を振り向くと元気な笑顔でおはようと言ってくれた。
俺も少し口角を上げておはようと言う。
ここに来て以来彼女とは一緒のベッドで寝るようになっていた。
一緒と言っても自分が寝ようとすると勝手に布団の中に入ってくるだけで何かをする訳ではない。
どうにか離れようとしない布団を引き剥がして着替えをし、顔を洗う。
水面に写る顔を見て、首を触った。あの朝くっきりと付いていた縄の痕も気付かぬうちにすっかり消えてしまっていた。
それすらも夢だったかのように。
不思議な出来事はそれだけでは無かった。
母親は読書が好きであり、家には本が何冊かあるのだが、中身は真っ白であった。
彼女はその本を何も気にせずに読んでいる。
そしてニコニコしているのだ。
それが怖くてたまらなかった。
自分は彼女が人として生きているとは到底思えなかった。
だから今すぐにでもここから帰りたいと思ってしまった。
─3人で朝ご飯を準備して食卓を囲む。
最初は美味しいと思っていたご飯でも自分に何か害があるのではないかと思うとあまり美味しいとは言えなくなってきた。
ここで決心をして2人に提案をする。
「・・・俺、この村でて行こうと思うんだ」
言ってしまった。後には戻れないだろう。
「さっき起きたら、記憶も戻ってたんだ。だからこれ以上迷惑かけるわけには行かないし・・・」
「あら、そうなの残・・・」
「なんで?」
彼女の声をリアが遮った。
場の空気が凍り付く。
彼女は暗い声で続けた。
「なんでそんな嘘つくの?本当はまだ何にも思い出してなんかないでしょ」
「嘘・・・なんてついてないよ」
鋭い目付きが心を抉ってくる。
こんな嘘はバレても仕方がないとは思うが、彼女からは"ここから出て行かせるにはいかない"と言う強い圧を感じた。
「ねぇ、教えてよ。なんで?どうしてここから出ていきたいの?」
これ以上彼女説得をするのも無理だろうと思った。
「いっ・・・いや~ちょっとお世話になり過ぎて、申し訳無いと言うか、なんと言うか・・・だから出て行こうと・・・ね?」
「ただ出て行くって言ったら引き留められるだろうから・・・」
とりあえずここは謝って様子を見るしかない。
「・・・もう私達家族でしょ?そんな遠慮いらないよ!これからはずっと一緒だからね!」
彼女の冷たい表情は急に柔らかくなり、さっきの雰囲気は嘘の様になくなって、何事も無くご飯を食べ終えてしまった。
─ ただ本当の本当に彼女が自分と一緒に居たいのならこの事を忘れて、記憶が戻る時までゆっくりしたいと思ったのだが、そうでもないらしい。
あれからの数日間、彼女ずっと見られている気がするのだ。
外で仕事をしている時も夜に寝ている時も。
バレないように陰からじっと。
それはここから出て行くのをとても警戒しているようにしか感じられなかった。
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