第2話

俺の家は駅から徒歩10分の2DK。2人で住むなら十分な広さがある。

真凛が家に来てから1週間が経ったが、何の進展もない。


「真凛ちゃん今からショッピングに行かない?何でも好きなの買ってあげるよ」

「お気持ちはありがたいですが、特に欲しい物はないですから」


心の距離を埋める為に、外食やショッピング等に誘ってみるが、謙虚なのか嫌われているのか尽く断られてしまう。


「じゃあ俺の服を選んでよ。秋物揃えたいからさ」

「そういう事なら、分かりました」


これで嫌われてない事が分かった。それに買い物を通じて仲良くなれるはずだ。



土曜日の朝になり、俺達は近くのショッピングモールに来た。


「混んでいますね」

「まあ土曜日だからな、そんな事よりも服を見に行こう。お気に入りのお店があるんだ」


お気に入りのお店とは、モールの隅にひっそりと構える個性な服屋だ。


「ここですか?」


服屋の前まで来ると、真凛は及び腰な態度で接してくる。


「うん、個性的だから気に入ってる。特に看板がかっこいいよね」

「Nocturne…」


黒をベースにした看板は夜を表しているのだろう。その男心を擽る看板に引き寄せられる男は結構いるのだろう、10年前から客足は途絶えてないようだ。

店内はあいも変わらず暗めの配色に、英語が印字されている服や、十字架のネックレス等のいい感じのアイテムが豊富に売られている。


「言いにくいんですけど、凄くダサいです」

「ダサい!?」

「凄くダサいです」


体に衝撃が走る。自分ではかっこいいと思ってた服がダサいなんて…でも確かに抗議で隣になった女の子に笑われたり、友達があまりできなかったのも服装のセンスが悪かったのだと考えると納得をしてしまう。


「ですので、私が服屋を選びますよ」

「はい…分かりました」


悔しさと恥ずかしさはあるが、真凛は凄くファッションセンスがあると思う。


「大和さんの服のセンスは、中学生レベルですよ」

「じゃあどんなのがおしゃれなんだ?」

「十字架のアクセサリーがおしゃれではないのは確かです。難しく考えないで、デニム生地のパンツにシンプルなTシャツで十分だと思います」


地味に毒舌な子だな。だけど、確かに大学でおしゃれな人はシンプルな着こなしをしている感じはあるな。


「こんな感じでどうですか?」


真凛のセレクトは、ジーンズに、白色のTシャツ、黒色のジャケット。シンプルだけど学生ならこれで良いのだろう。


「おぉ!かっこいい」


思わずニヤけてしまう程に別人に変身した。人間の印象は見た目で決まるってのは本当なんだと実感した。


「見違えましたね」

「真凛ちゃんのおかげだよ、ありがとう」

「まぁ、厨二ファッションの人と一緒に歩くのが恥ずかしかっただけですから」


気恥ずかしそうに頬を掻く真凛。


「じゃあこれ会計してくるから、お店の外で座ってていいよ」

「分かりました」


真凛を外へ退避させたのは、理由がある!。それは…何かプレゼントしたいと考えたからだ。


「麦わら帽子か、今のコーディネートと合うかな?」


日差しが強く、熱中症のニュースが後を絶たない、この時期にぴったりのアイテムだと思う。


「これでよし」


真凛を持たせられないので、会計を終わらせ店を後にする。

麦わら帽子のプレゼント喜んでくれるだろうか?

喜んでくれなかったらどうしよう、一抹の不安を抱え真凛へ視線を戻すと、男二人に絡まれている。


「可愛いね君、奢るからご飯食べない?」

「知り合いと一緒に来てるので結構です」

「良いじゃん!行こうぜ!」


断っているのに、無理に誘うだけではなくて、無理矢理腕を掴んで、連れて行こうとしている。


「おいお前ら嫌がってるだろ!」

「誰だよ、この子の連れか?」

「そうだが、文句があるのか?」

「何?喧嘩?」


俺達の口論に引き寄せられたのだろう、野次馬が増えてきた。


「その腕を離せよ、華奢な腕に傷がついたらどう責任を取るんだ」

「はぁ?責任なんて取るわけ無いだろ」

「そんなんだから、中学生一人を2人で囲む事しかできない、意気地無しなんだよ!」

「なんだと!」


普段は人を煽るなんて事はしない。だが人が嫌がる事はどうしても許せない。殴られてもその判断に間違いはない。

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