40話 ポルトニアへの一時帰還
「ようこそ港町ポルテアへ。アインラッド王国一の港町を、ぜひお楽しみください♪」
サウスポルトニアに新たに設置した転移魔法陣を使い、ポルテアのとある店へ瞬間移動した。
倉庫と思しき室内に、ドグマゆかりの人々が降り立つ。
ここは今を時めく人気店――エ=マルシーヤの店内。
ポルテアに二か所ある店舗のうちの一つだ。
ポルテアには転移魔法陣を二か所設置してある。
一つはプラント商会の研究室、もう一つがここだ。
転移先にこの店を選んだのは――
どうせなら、この港町一番の人気店で彼らをもてなそうと考えたからだった。
店内は常に満席で、この日も上流階級の客で賑わっている。
そのため普段は使用していないVIP室に、イスマとサリーネを案内した。
ここはカイエイン商会、ならびにプラント商会にとって特別な上客をもてなす時以外、ほとんど使われない部屋である。
華美ではないが高級な調度品で整えられた室内は、落ち着いた気品を感じさせる。
慣れない場所に目を白黒させる二人。
そんな二人の前に運ばれてきたのは、エ=マルシーヤの人気メニューだった。
二人は話すことも忘れ、夢中でそれを頬張っていた。
「いかがでしたか?
突然のことで特別なお料理はご用意できませんでしたが、当店自慢の人気メニューです」
テーブルの前に立ち説明を始めたのは、この店の店長を務める
エマルシヤ=カイエイン。
身長はそれほど高くないが、女性らしい凹凸のある体つきをしている。
学園を卒業した後、スイーツ専門調理人を目指して努力を重ねた結果、
この店の料理長サブセルに次ぐ実力を身につけていた。
普段は明け方から仕込みを行い、開店後はホールを担当。
夜は経理までこなす多忙な日々を送っている。
自らを救ってくれた甘味に、若いエネルギーのすべてを注ぎ込んでいるのだ。
「ラング君、前もって教えてくれていたら、もっときちんとしたお出迎えができたのに……。
本当に急なんだから」
ぷんぷん怒っている姿が、どこか可愛らしい。
「ごめんお嬢。こっちも急に決まったもんで、突然来ちゃったんだ。テヘ」
久しぶりにテヘペロしてごまかそうとするラング。
困った時は相手を煙に巻けばいい、と思っている節がある。
「こんな美味しいもの、初めて食べました。
まさか甘い物を食べられるなんて、夢のようです」
サリーネは夢見心地の表情を浮かべ、感想を述べた。
「家内の言う通りだ。
お貴族様でもない俺らが、こんなものをいただいちまっていいのかと不安になるくらいだ。
町で腹を空かせているみんなに、なんだか申し訳ねぇ気分になるな……」
喜びに打ち震えながらも、良心の呵責に苛まれた様子を浮かべるイスマ。
そうこうしていると、入口の扉がノックされた。
ぞろぞろと中に入ってきたのは、懐かしい顔ばかりだ。
「よっ兄弟、久しぶりやな。元気にしとったか?」
「兄ぃ、おひさ~。もうブリブリ元気さ!」
ラングと固い握手を交わしたのはコモドンだ。
その後ろにはホルス、イワン、そしてウルマの姿もあった。
研究室の方へ直接飛んだナターシャが、来訪を知らせるついでに彼らを連れてきたのだ。
こうして満足げなドワーフ夫婦を前に、ラングたちの急な会議が始まった。
サウスポルトニアに起こっている二つの問題。
物資の供給が止まり、事態は急を要すること。
そしてラングたちが街の救済に乗り出したこと――。
それらを順に説明していく。
「そりゃ、なんとか助けなあかんな。
ドグマ氏の頼みとあらば、引き受けな男がすたるっちゅうもんやで」
コモドンは一も二もなく賛成の意を示した。
「おあつらえ向きにポルトニア平原は食材の宝庫。
私もお役に立てそうですね。喜んで協力させていただきます」
力強く協力を申し出るイワン。
目を爛々と輝かせているのは、
恐らく植物の宝庫である“ポルトニア平原”をついでに探索するつもりだからだろう。
「私もイワン先生のお手伝いをさせてください!」
卒業後、イワンの助手を務めているウルマまでもが乗り気だった。
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