第25話「最後の話し合い」

翌日、家のリビング。

 母さんが二人を座らせ、父さんが深く息を吐いて口を開いた。


「昨夜、一晩考えた。……正直、父親としては認めたくない」


 葵が小さく肩を震わせる。

 俺は拳を握りしめたまま、視線を外さない。


「だが、無理やり引き離しても意味がないことは分かった。お前たちが本気なのは、見ていて嫌というほど分かったからな」


 沈黙が落ちる。


「……だから条件をつける。二人とも、卒業するまでは“兄妹”として過ごせ。公の場で恋人として振る舞うのは許さん。

 それでも気持ちが変わらなければ、そのとき正式に認める」


 思わず息を呑んだ。

 葵がゆっくり顔を上げる。


「……それで、本当に認めてくれるんですか?」


「ああ。約束する」


 葵の目からぽろぽろと涙がこぼれた。

 俺はその手を握り、しっかりと頷いた。


「分かった。絶対に守る。だから、その日が来たら——」


「認めてください。私たちの気持ちを」


 父さんはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。


「……ああ。約束だ」


 張りつめていた空気が少しだけ緩む。

 母さんがホッと笑い、葵も涙を拭いた。


(これで、前に進める……)


 まだ試練は続く。

 だが、もう逃げるつもりはなかった。

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