第24話「追いつめられた夜」

翌日の夕方。

 フロントからの内線が鳴った。


「天城さん、保護者の方がお見えですが……」


 心臓が跳ねた。

 葵と顔を見合わせる。


「……来たな」


 ロビーに降りると、父さんが立っていた。

 険しい顔で、こちらに歩み寄ってくる。


「今すぐ帰るぞ」


「嫌です!」


 葵が震える声で叫んだ。

 父さんが一瞬言葉を失う。


「俺たちはもう決めたんだ。離れないって」


「お前たちは兄妹だろう!」


「血はつながってない!」


 怒鳴り返した瞬間、ロビーが静まり返った。


「……今帰れば許す。だが、このままなら——」


 父さんが言いかけたところで、母さんが駆け込んできた。


「もうやめて! 二人とも、もう十分苦しんでるじゃない!」


 母さんが二人の間に立ちはだかる。

 父さんは拳を握りしめ、やがて深く息を吐いた。


「……今夜は好きにしろ。だが明日、家で話し合う」


 そう言い残して去っていく父さんの背中が、やけに遠く感じた。


 ホテルの部屋に戻ると、葵が泣き出した。


「お兄ちゃん……怖かった……」


「大丈夫。明日、全部話そう。絶対に守るから」


 そう言って抱きしめると、葵の震えが少しずつおさまっていった。

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