第21話「父親の疑念」

夕食の席。

 父さんが、珍しくじっと俺と葵を見ていた。


「……お前ら、最近一緒にいること多くないか?」


 箸を持つ手が止まる。

 母さんも少し驚いた顔をしている。


「たまたまですよ」

 葵が慌てて笑うが、父さんの視線は鋭いままだ。


「たまたまにしては距離が近い気がするな。……何か隠してるんじゃないのか?」


 心臓が跳ねる。

 言い返そうと口を開きかけたが、母さんが間に入った。


「もう、あなた。そんな詮索しないでよ」


「いや、父親として言ってるだけだ」


 そう言い残して父さんは黙り込んだ。

 食卓の空気が一気に重くなる。


 食後、部屋に戻ると葵が不安そうに言った。


「お父さん、絶対気づいてますよね……」


「ああ。でも大丈夫だ。俺が何とかする」


「……でも、もしバレたら——」


 葵の声が震える。

 その手をぎゅっと握った。


「大丈夫。絶対に離さない」


 葵が少し安心したように微笑む。

 だが、胸の奥のざわめきは収まらなかった。


(もう時間の問題かもしれない……)

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