第20話「ライバルとの対峙」

 放課後、昇降口で佐伯を待ち伏せした。

 葵は先に帰らせてある。


「……お前だろ、噂流したの」


 低い声に、佐伯は一瞬だけ眉を上げ、すぐに笑った。


「証拠あんのか? でもまあ、事実なら噂でも何でもないだろ」


「関係ない。俺と葵のことを勝手に言いふらすな」


「……やっぱ付き合ってんのか」


 佐伯が目を細める。


「兄妹なのに? それ、みんな知ったらどう思うかな」


 胸の奥がカッと熱くなる。


「どう思われてもいい。葵を傷つけるなら、許さない」


 思わず一歩踏み出した。

 佐伯が少しだけ後ずさる。


「……本気なんだな。だから言ったろ、諦めないって」


 そう言い残して佐伯は去っていった。

 残された俺は、握りしめた拳をゆっくり下ろす。


(……もう隠してる場合じゃないかもしれない)


 家に帰ると、玄関で葵が待っていた。


「お兄ちゃん……佐伯くんに何か言ったんですか?」


「ああ。もう二度とお前を泣かせないって言った」


 葵が驚いたように目を見開き、やがてそっと笑った。


「……ありがとう。嬉しいです」


 その笑顔を見た瞬間、心の奥で決意が固まった。


(守るって決めたんだ。どんなことがあっても、絶対に)

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